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「やったぁーっ!! 朋也~、凶悪モンスターをやっつけたよぉ~\(^o^)/」
 マーヤは朋也の首筋に飛びついてきた。勢い余ってそのままクルッと1回転する。
「ハハ、ホントにたいした奴だな。そんな小さな身体のどこにあんなパワーが宿ってるんだか……」
「エヘヘ~♪」
 彼女は彼の首にぶら下がったまま、ケラケラと笑っていたが、しばらくして急におとなしくなる。あ、あれ? もしかして……。
「朋……也ぁ……。あたし、もう駄目かと思ったよぉ……」
 小さな肩を震わせて、しゃくり上げ始める。
「ごめんな……あんな怖い思いさせちゃって……」
 彼は羽越しに彼女の小さな背中を優しくさすってやった。
 そりゃ、あんなホラー映画じみた化け物に生きながら脳を吸われそうになったんだから無理もないよな。身体のサイズを考えれば、彼女の味わった恐怖は自分のそれより数段勝っていたに違いない。もっと早く来てやれればよかった。
「本当に、このまま二度と朋也やみんなの顔見れないのかと思っちゃったぁ……。でも、朋也が来てくれたからぁ……。エヘヘ……ありがとねぇ、あたしのこと見捨てないでくれてぇ……」
「バカだな、マーヤを見捨てたりするわけないだろ? 絶対そんなことするもんか!」
 抱きしめた手につい力がこもる。
「と、朋也ぁ~、そんなに強くしたら苦しいってばぁ」
「ご、ごめん」
 朋也はあわてて手の力を緩めた。
「あ、でも……そっとならいいよぉ♥」
「……このくらい?」
 腫れ物にでも触るようにそっと、マーヤの絹のように柔らかい髪をなでながら尋ねる。
「うん……朋也の胸、大きくて温かいやぁ……。あたし、誰かにこうして抱きしめてもらったの、初めてなのぉ、エヘヘェ♥ もうしばらくこうしててもい~い?」
「ああ、もちろんさ……」
 触れるだけで壊れてしまいそうな小さな妖精の息遣いを間近に感じながら、こうしてまたマーヤと戯れる時間を失わずに済んだことを、今はただ世界に感謝したかった──


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