その場に立ち尽くしたまま呆然としているクルルに、朋也は悔悛の情に駆られながら声をかけた。
「ごめんな、クルル? ひどい目に遭わせちゃって……」
こんな危険な役目を彼女に押し付けたのはやっぱり間違いだった。彼女を選ばないと気を悪くするんじゃないか、なんてつまらないこと考えたりして、本当にバカだった。大体、彼女は年齢でいえばまだ中3に過ぎないのに。
クルルは朋也を振り返ってニッコリ微笑んだ。
「クルル、我慢したよ……。怖かったけど、朋也がきっと助けに来てくれるって思ったから、泣かなかったんだよ……」
こらえていた涙が堰を切ったようにわっとあふれ出る。クルルは朋也の胸に飛び込むと声を上げて咽び泣いた。
「……よく頑張ったよ。本当に偉かったな……」
あんなホラー映画じみた化け物に生きながら脳を吸われそうになったんだもの、無理もないよな。震える肩を優しくたたきながら、朋也は声をかけ続けた。
しばらくしてから、クルルは彼の顔を見上げながらにっこり微笑んだ。
「朋也がクルルのこと誉めてくれたら、怖いの吹き飛んじゃった。クフフ♪」
本当に、強い女の子だな、クルルは。こんなに純真で、真っすぐな子を二度と泣かせるような真似しないよう、自分がしっかりしなくちゃ……そう思いながら、朋也も彼女に微笑み返した。
「ハハ。さあ、みんなのところへ戻ろうか?」
「うん! あ、でも……後ちょっとだけ、クルルのことギュッとしてもらってていい?」
「ああ、いいよ……」
腕の中で安心しきったように目を閉じながらつぶやく。
「クルルね……こうして朋也の腕の中に抱かれてると、すっごく安心できるの……自分は独りぼっちじゃない、この世界とつながってるって実感できるの……だから……クルル、朋也に逢えて本当によかった……」
そこまで信頼してくれるなんて、自分はなんて幸せ者なんだろう……朋也はこうしてクルルとめぐり合えたことを世界に感謝したい気分だった──