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「おい、フィル! 大丈夫か!? 無理するなって言ったのに……」
 朋也は思わず彼女のもとに駆け寄った。
「ええ、ご心配なく。実は、ラフレシアで吸収した彼自身の生命力を利用したのですよ」
 にっこり微笑んで見せる。なるほど、そこまで計算してたなんてさすがフィルだな。
「まあともかく、フィルが無事で本当によかった……。助けに来るのが遅くなっちゃってごめんな? さあ、みんなのところに戻ろうか」
 朋也がサイドカーのところに戻ろうとしかけたとき、フィルが彼の袖を引っ張った。
「あの、朋也さん。大変申し上げにくいのですが……その……胸を拝借してもよろしいでしょうか?」
 返事も待たずに彼の胸に飛び込んでくる。
 そうか……あんなホラー映画じみた化け物に生きながら脳を吸われそうになったんだから、いくら樹の精だって恐怖を感じて当たり前だよな。ましてやフィルは、動物の気持ちを理解しようと一生懸命勉強してるくらいなんだもの。
 肩を小刻みに震わせる彼女の背中に手を回し、優しくさすりながら声をかけてやる。
「ごめんな、フィル。あんな怖い思いさせて……」
 少し落ち着いてきたのか、しがみついていた制服から顔を上げて、彼女は面目なさそうに彼を見上げた。
「朋也さん、ごめんなさい……。どうか、私のこと、嫌いにならないでくださいね?」
「バカだな。嫌いになったりするわけないだろ? ていうより、フィルにもこんなカワイイところがあったんだなって、またひとつ発見しちゃったよ♪」
「そ、そんな……」
 頬を朱に染めてモジモジしながらうつむく。アハハ、本当にカワイイな。嫌いになるどころか、むしろその反対だよ、フィル──


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