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 一面の花畑。舞い踊る無数の蝶たちに祝福を受けるように、1組の男女が身を寄せ合っている。りりしい顔立ちをしたスマートなグレーのネコ族の男と、赤い髪と対照的な澄んだグリーンの円らな瞳で男を真っすぐ見つめるやはりネコ族の美少女。彼女の背中に腕を回しながら、男がささやく。
「愛してるよ、ミオ」
「ウフフ……カイト、あたいも♥」
 2人の唇が触れ合いそうになるまで近づき、そして──

「!!!!」
 朋也はガバッと跳ね起きた。花畑も愛し合う2人の姿もどこにも見えない。そこはシエナの宿の1室だった。
「……。ヤな夢見た(T_T)」
 時計を見るとまだ10時を回ったばかりだ。明日からのこともあるし、今日はみんな早目に床に就いたんだよな。もう一度布団に潜って寝直そうとするが、ヘンな夢を見たせいか、目が冴えてしまって寝つかれない。
 ちくしょ~、カイトのやつ、夢の中にまでちょっかい出してきやがって。普通夢っていうのは、もっと本人の願望に沿う形でシチュエーションを用意してくれるものなんじゃないだろうか?
 しょうがない、ちょっと外の空気でも吸ってくるか……。朋也は起き上がると、制服を羽織って部屋を出ようとした。
 ドアのノブに手をかけたちょうどそのとき、誰かが前の廊下を通り過ぎる気配を感じる。足音は、スキルのおかげでかなり敏感になった彼の耳にも聞こえてこない。
 誰だろう、こんな時間に? 女の子たちは隣の部屋で寝てるはずだが……。
 頃合を見計らって、音をなるべく立てないようそっとドアを開ける。角を曲がる前にチラリと見えた後ろ姿は、ミオだった──


*選択肢    後を尾ける    ほっとく

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