戻る



ミオ: ---
* ベストエンド不可

 20分、いや10分でも横になるだけで随分違うはずだ。かといって、何の防衛手段もとらずに戸外で寝たりしたらたちまちモンスターに襲われてしまうし……。ちょっぴりだけ休ませてもらうか。クルルの出身地でもあるユフラファなら勝手も知っているし、村のみんなも自分の顔は覚えてくれているだろう。こんな遅い時間に門を叩くのは気が引けるけど。まあ、公会堂を使うのであれば、寝てる村人たちを起こさなくて済むだろうし。
 朋也は三叉路を真っすぐ南に向かった。村の入口でエメラルド号を降りる。家々の窓は閉められ、灯りも見えない。村のウサギたちはみんな寝静まっているようだ。シエナとは違うもんな。なるべく足音を立てないよう、中央広場近くの公会堂に足を向ける。
 と、前方に人影が見えた。ウサギ族ではない。誰だ、こんな夜中に?
「誰だ、こんな夜中に!?」
 今の声は聞き覚えがあるぞ? ひょっとして、ゲドか? 後ろに見える大きな図体と三角耳の影はブブとジョーに違いない。何だ、トラの子分たちじゃないか。よかった……ホッとしながら近づいていく。
「こんな夜中に村に忍び込みよるなんてええ度胸やないか!?」
「大方、ユフラファがいま女だけなのをいいことに悪事を働こうってえ魂胆なんだろうが、トラの兄貴の遺志を受け継いだこのゲド様がいる限り、娘たちにゃあ指1本たりと手は出させねえぜ!!」
「悪いことしたらお仕置きなのね、ホントにね!」
 3人ににじり寄られ、朋也はあたふたしながら弁明を試みようとした。
「え、え!? いや、あの、そういうわけじゃ……ちょ、ちょっと3人とも、俺だってば!」
「問答無用! 覚悟しやがれ!!」
「ご、誤解だって──」
 次の瞬間、3人が一斉に飛びかかってきた。
 ブブの横綱級張り手をギリギリ交わす。なんか動きが素早くなったみたいだな。ホントにダイエットしたのか? まだ90キロはありそうだけど。
続いてジョーの剣が朋也の足を薙ぎ払おうとする。お、ちゃんと当たるようになったんだな? ちっとも痛くないけど。
「おのれ悪党め、ちょこまかと! ならば、この俺様の必殺剣を受けてみやがれ! 奥義、真・牙狼っ!!」
「ぐばあっ!!」
 や、やられた。ゲドのやつ、スキルをジュディに譲渡したばかりのはずなのに、もうそんなイヌ族秘伝の極意を究めたのか!? さすがはトラの子分、侮りがたし。ガク(_ _)m 朋也はその場にバッタリ倒れた。
「どら、面を見せろ! ……あ、あれ!? あんた──」
「どっかで見たことある思うたら、朋也の兄ちゃんやないか!?」
「ホントにね……。でも、不思議だね。兄ちゃん、匂いはほとんどネコ族になっちゃったね」
「いででで」
 ジョーに毛づくろいをかけてもらいながら、朋也はインレに向かう途中で立ち寄ったことを簡単に説明した。何しに行くのかまでは言わなかったけど。
「何や、お前さんやったらはよ言えばよかったに」
「だから、言おうとしたのに」
 今の騒ぎでウサギたちも起きだしたようで、周りの家に灯りが点き始める。何人かのウサギ族の女性は表に出てきて4人を取り囲んだ。
「こら~、3人とも何騒いでんのよ!?」
「あらっ!? この間のニンゲンのお兄さんじゃなぁい!」
「ちょっとあんたたち、村の恩人になんてことすんの!?」
「大丈夫、お兄さん? ごめんなさいね♥」
 彼女たちに一斉に非難を浴び、ゲドたちがぼやく。
「何で俺たちが責められなくちゃいけないんだよ~」
「世の中不公平にできてるもんやな」
「ホントにね」
 朋也が3人を弁護する。
「ああ、ごめん、みんな。俺がいけないんだ。3人はちゃんと見張りをしてただけだよ」
 そういうわけで誤解も解けたため、朋也は休憩させてもらうことになった。公会堂で村の女の子に熱いハーブティーをご馳走になる。ゲドにやられてますますヘロヘロになってしまった。これじゃ自分で起きるのは絶対無理だなあ……。
 ジョーに15分たったら起こしてくれと頼むと、朋也は横になってあっという間に寝入ってしまった──


次ページへ
ページのトップへ戻る