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 ジョーに揺さぶられ、眠い目をこすりながら起き上がる。既に太陽は天頂高く昇っていた。
「どうして起こしてくれなかったんだよ~!?」
 問い詰めると、ジョーはキョトンとして悪びれもなく次のように答えた。
「え? 兄ちゃん15分になったら起こしてくれって言ったから、ちゃんと起こしたじゃんか。あんまり気持ちよさそうに眠ってたから、12時15分まで待ってたんだよ、ホントにね」
 ……。もう今さらインレに足を運んでもいるわけないよなあ……。でも、とりあえず行くだけ行ってみるか。
 朋也ががっくりしながら仕度していると、ウサギ族の女の子がサンドイッチを持ってやってきた。
「お兄さん、よかったら朝ご飯食べてかない? もう昼だけど……」
「……いただいてきます」
 結局お昼をご馳走になって一服してからユフラファを出る。インレは地図上の大陸の北西端に近いだけに、近づくにつれて気温が下がってくる。前方には雪をいただいた峰々が連なっている。ちらほらと辺りに積雪も目につくようになった。街道にはほとんど人が通った形跡がなく、路面も凸凹だ。明らかにプラクティスが不足している証拠だった。何だか嫌な予感がしてきた……。
 はたして彼の勘は当たっていた。インレに通じる山道の入口はすっぽりと雪に覆われ、通行の余地はなかった。上でスキーができるよ……。こんな調子じゃもう廃村になってるんじゃないのか? ルビー号の轍も見当たらない。何か記念に持っていこうかと思ったが、辺りは雪しかないし、カメラも持っていなかった。雪の冷たい感触を味わい、白銀の山々を仰ぎ見ながらしばらく呆然と立ち尽くす。
「ヤッホォーーッ!」
 試しに叫んでみる。麓でやっても意味ないか。と──地鳴りのような音とともに、足元がグラグラ揺れ出す。な、何だ!? 雪崩か!?
 次の瞬間、白い雪壁を突き破って何かが飛び出してきた。クマ!? ではない。ゴリラ!? でもない。何かわからんが、ともかくバカでかい生物だ。立ち上がると5メートルはあるだろうか。身体の模様は目の周りだけパンダみたいに黒くて残りは淡いピンクがかった白だった。まるでゴーグルをつけてるみたいだな。これが噂の未確認巨大生物というやつだろうか?
 朋也が呆気にとられていると、そいつはいきなり雪玉を投げつけてきた。
「ブハッ! ペッペッ(XoX;;」
 顔面で受け止めてしまった。予想外の攻撃でよけられなかった……。
 謎のクマゴリパンダは次から次へと雪を手につかみ、朋也目がけて投げてくる。こりゃかなわんと、朋也は一目散に退散した──


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