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千里: ---

「きれいなんてもんじゃないだろ、メチャクチャ美人じゃないか! あれで200歳越えてるなんて、信じられないな……」
 美貌もさることながら、何より驚異だったのは男の視線を釘付けにせずにはおかない豊満なバストだ。年齢を考えると、重力の法則に従って90度下を向いててもおかしかないが、彼女の胸は30代、いや、20代といっても十分通用する張りと瑞々しさを備えていた。目の肥えてない朋也にはカップ数まで判断できなかったけど……。
 さも感心したふうにうなずく朋也を見て、千里がちょっとすねたように口にする。
「残念だけど、私じゃちょっとかなわないわね……」
「ちょっとぉ!? 千里と彼女じゃ月とスッポン──ていうか、比較の対象にもならんだろ? 大体お前、あの胸見たかよ? 彼女に比べたらお前なんてまるで子供じゃん」
「そ・こ・ま・で・言・う~!?」
「あ、いや……」
 しまった、ついうっかり口が滑った。いまの彼女はただの幼なじみじゃなくて恐ろしい魔女だってことは肝に銘じておかないとな……。
「ま、まあ、お前もミオよりはあるかな?」
「あ~、後でミオちゃんに言ってやろおっと」
 墓穴掘った……。
「で、行くのかい? イゾルデの塔へ。幽霊が出るって噂だけど?」
「もちろん! ジュディの命がかかってるんだもの、幽霊なんてへっちゃらよ!」
 そこまで言ってから、朋也の顔をのぞき込む。
「……朋也、ひょっっとして怖いの?」
「こ、怖いもんか!」
 いったんは虚勢を張りつつ、確認する。
「やっぱり今夜のうちに行くの?」
 本心ではせめて日中にして欲しい……。が、彼の要望は受け入れられなかった。
「当然よ♪ 善は急げっていうでしょ? ま、オバケが出たら私の魔法で追っ払ってあげるから安心なさい♪ さ、行きましょ!」


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