「もちろんだ! 俺は、ジュディの力になりたい、彼女の希望をかなえてやりたいと思ったからここにいる。それ以上でも以下でもない!」
ウーの鋭い視線を弾き返すように、朋也もまっすぐ前を向きながらきっぱり言い放つ。
≪よかろう……では、お前たちの言葉が真実かどうか確かめさせてもらおうか!≫
とうとう2人はイヌ族の崇める神と対決することになった。ジュディ本人の守護者と闘うのは気がひけるが、自分たちの言葉を認めさせるためには彼に勝つ以外ない。
ウーの装備は剣ではなく身の丈ほどもある鉄杖だったが、その破壊力はコボルトの大刀やケルベロスの牙をも凌ぐほどだった。そのうえ、さすがに一族のスキルを管理する立場にあるだけに、2人の繰り出す技をことごとく見切ってしまい、一太刀も浴びせることができない。
≪どうした? お前たち2人が力を合わせぬ限り我を倒すことはできぬぞ!?≫
朋也とジュディは左右に散って同時攻撃を試みるが、ウーはその場を動くことさえせず2人の剣を弾き返した。
「くっ……!」
≪それで終わりか。ではこちらから行かせてもらおう!≫
杖を高々と掲げると激しいいかずちが2人に襲いかかる。
「ぐわああっ!!」
守護神獣ともなれば魔法攻撃力も並の住民やモンスターの比ではない。朋也はどうにか耐え凌いだが、ジュディの方はガックリと膝を折ってしまう。雷属性はイヌ族の弱点なのだ。
守護神なんだからわかってるだろうに……それとも狙って撃ってきたのか!? 朋也はジュディのそばに駆け寄って抱き起こすと、シエナで入手した気付薬のドリンクを飲ませた。
「大丈夫か!?」
「ケホッ……う、うん」
「こいつはお前が持ってろ」
バーナードの盾を押し付けるように彼女に手渡す。
「朋也はどうすんのさ!? お前だって魔法は弱いじゃんか!」
「平気だよ。ジュディに打たれづよさをさんざん鍛えてもらったからな。それより、悪いが剣を替えてくれないか? それと、バックアップを頼む!」
不安げなジュディからドーベルソードを受け取ると、両手で握りしめて身構える。ジュディはステータスアップのフルムーンのスキルを朋也にかけた。長期戦は不利になるだけだし、こうなったら後は出し惜しみせずに持てる最強スキルで決着を図るまでだ。
「牙狼!!」
奥義を一閃。彼女に比べるとまだ荒削りではあったが、型はもう身に付いた。だが、ウー神はダメージを完全に防ぎきっている。
「牙狼!!」
間髪入れずもう一閃。カウンターを危ういところで交わす。ジュディはハラハラして見守りながら、体力補強の毛づくろいとフルムーンをかけ続ける。
「牙狼ッ!!」
もう一閃。
≪すでに見切っている技を何度繰り出そうと同じことだぞ? 判らぬのか?≫
肩で息をしながら向き直り、剣を握り直すと気を集中させる。まだだ……あと少しで……つかめる……!
「牙狼、二連尖ッ!!!」
ジュディが目を丸くする。まだ彼女ほど洗練された域には達していないが、何とかものにできたぞ!
しかし、即席とはいえ一族最大のスキルを上回る最終奥義も、残念ながらウー神には通用しなかった。
≪ほお……。イヌ族以外で我が一族のスキルにそこまで習熟した者はこれまでいなかった。心意気だけは誉めてやろう。だが……ここまでだな≫
再び裁きのいかずちの雨を降らせる。駄目だ、もう立っていることもままならない……。
と、ジュディがそばに来て、彼の肩を抱いて身を寄せた。
「朋也……ごめん、まだ立てる?」
「え?」
「もう1回いこう……」
ジュディは2人に回復を施す代わりにさらにフルムーンをかけた。次の勝負をしくじったらおしまいだ。
「行くよ!!」
「牙狼──」
「四連尖ッ!!!!」
お互いに目で合図すると2人の最強技を同時に発動する。キンッ!! 鋭い金属音が響き渡る。見切られたか!?
──と、2人の見ている前で、彼の手にしていた杖が真っ2つに折れた。
ウー神のいかめしい表情に初めて驚きの色が表れる。彼はそこで戦闘態勢を解除した。