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マーヤ: -----
* ベストエンド不可

「ごめん。少し考えさせてくれ……」
 朋也は腕組みをしながら唸った。いいか、10や20の話じゃないんだぞ? おまけに寿命の差はどうする? 俺が死んだ後も、彼女はまだ何百年も生き続けるんだぜ!? 一体、2人の間に恋愛なんて成立するんだろうか……。
 彼が黙り込んでしまうと、痺れを切らしたマーヤがふくれっ面をしてつっかかった。
「もうぉ、何考えてんのよぉー! 恋をするのに年齢なんて別に関係ないでしょぉ!?」
「いや、それは程度の問題で……」
 それでも朋也が煮え切らない態度を示したため、彼女は声を震わせて訴えた。
「……あたしが精霊でも構わないって、側にいて欲しいって言ったのは、嘘だったのぉ?」
 円らな瞳にたちまち大粒の涙が浮かんだ。泣き顔を見られるのが嫌だったのか、彼に背を向ける。
 女性しかおらず、エデンに奉仕するためだけに生きる妖精として、恋をする機会などなかったはずの自分が、朋也から告白されたことが本当はよっぽど嬉しかったんだろう。本気で彼に好意を寄せてくれた彼女を不用意に傷つけてしまったことを、朋也は後悔した。
「……悪かったよ。俺、別にマーヤを歳で好きになったわけじゃないもんな……」
「うん……」
 朋也が頭を下げると、マーヤはこぼれかけた涙を拭って向き直った。少しは機嫌を直してくれたかな。彼は話題を替えてちょっぴり茶化すような口調で彼女に尋ねた。
「それにしても……俺、マーヤのことずっと年下扱いしてきちゃったけど、今度から敬語使った方がいいかな?」
「別に言葉遣いなんて今までどおりでいいわよぉ。あたし、朋也に教わったこといっぱいあるしぃ。妖精の基準じゃまだまだ駆け出しだものぉー。大体、人の価値なんて生きてきた年数で決まるものじゃないでしょぉー? いくつになっても命は1コだけなのも変わりようがないんだしぃー」
「その辺がサラッと言えるところはやっぱり歳の功なのかな?」
「もうぉ! あたし、気持ちはあなたと同じ17のつもりなんだからぁ、あんまり歳を強調しないでよねぇ~!」
「ごめん、ごめん」
 朋也は改めてハンドルに向き直った。
「さて、そろそろ行こうか。飛ばされないようにしっかりつかまってろよ? じゃあ、出発!」


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