朋也は額に手を当てて少し考えた。彼女が妖精であることを承知のうえで告白した以上、歳が離れていること自体はたいしたことだと思わないが──
「……もちろん、俺は構わないけど……マーヤはどうなんだ? 君らからすれば、俺たちの命なんて束の間の陽炎みたいなもんだろ? それでも、いいのか?」
「大切なのは現在(いま)だと思うのぉ。あたしがいま、あなたのこと好きだってことぉ……。朋也から見れば、不公平なのかもしれないけどぉ……」
「それは見方によりけりなんじゃないかな? 先に死ぬ方が悲しい思いをしなくて済むから楽だとも言えるし……。まあ俺は、死んでからも時々思い出してくれれば嬉しいし、誰か別にいい人を見つけてくれればその方が心配ないけど。──なんて、いまのうちからそんな先のこと考えてても仕方ないな。ともかく、月並みな言い方だけど、愛さえあれば歳の差なんて気にならないさ!」
「ウフフ♪ そういうことよねぇ~」
でも、もし彼女と結婚したらギネス入りは間違いないな……と朋也は思った。
「それにしても……俺、マーヤのことずっと年下扱いしてきちゃったけど、今度から敬語使った方がいいかな?」
「別に言葉遣いなんて今までどおりでいいわよぉ。あたし、朋也に教わったこといっぱいあるしぃ。妖精の基準じゃまだまだ駆け出しだものぉー。大体、人の価値なんて生きてきた年数で決まるものじゃないでしょぉー? いくつになっても命は1コだけなのも変わりようがないんだしぃー」
「その辺がサラッと言えるところはやっぱり歳の功なのかな?」
「もうぉ! あたし、気持ちはあなたと同じ17のつもりなんだからぁ、あんまり歳を強調しないでよねぇ~!」
「ごめん、ごめん」
朋也は改めてハンドルに向き直った。
「さて、そろそろ行こうか。飛ばされないようにしっかりつかまってろよ? じゃあ、出発!」