上階との隔壁にあたる雲の部分がパックリ割れて、光とともに降りてきたのは、案の定羽根を生やしたゾウだった。耳も翼の形になっているので、4枚羽のセスナゾウというところか。耳羽だけだとダ○ボと間違われて都合が悪いんだろう……。よく見ると目が5つもあるので、分類学上はゾウとはかけ離れているかもしれない。
「あやや~、あれはディーヴァのペットのシヴァだわぁ~……」
「蜂蜜で手なずけられるかな?」
「無理だと思う~。そんなものでなびいたら飼い主に殺されるって、きっと判ってると思うわよぉ~」
なるほど……。そうは言っても試してみる。
「シヴァちゃぁん♪ 蜂蜜あげるから買収されてくれなぁ~い?」
「パフォオォ~~ッ!!」
怒った。当たり前か……。
シヴァはいきなり放水してきた。2人がずぶ濡れになったところでサファイアを放ってくる。マーヤがルビーを使い、氷漬けにされるところを危うく逃れる。こいつ、なかなか手の込んだ真似を。あったまいい……のか習性なのか。
少々矢を放ったところではびくともしないため、2人とも本気を出すことにする。2人の本気とは、持ち味であるマーヤの魔力と朋也の弓スキルを活かした連携プレイだった。
「トリアーデ!!」
「束射!!」
だが、シヴァは魔法防御も物理防御もべらぼうに高いらしく、2人の連携技を受けても平然としていた。
「ムムゥ……それなら、あたしのとっておきの必殺技をお目にかけちゃうわよぉーっ! とろけるキッスゥ~♥♥♥」
「何それ?」
「敵の防御力を下げるのぉ~」
……。妖精に限らないけど、種族の特殊スキルってほんとヘンなネーミングが多いんだよなあ。あ、でもホントに溶け出してきたぞ!?
チャンスとばかりに朋也が射かける。さすがの最強ペットシヴァもこれには参ったらしく、尻尾も鼻も耳も巻いて逃げ去っていった。主人の所に戻るのは恐いとみえ、階下の雲を突き抜けて降りていく……。
「パフォパフォ~~ッ(T_T)」
「ごめんねぇ、あたしたち後には退けないのぉ。バイバァ~~イ♪」
厄介な敵を片付け、正面の扉に向き直る。開くとその向こうはエレベータになっていた。乗り込んで上に上がるスイッチを押す。いよいよディーヴァとご対面か──