ともかく、少しでも彼女の魅力的な肢体から視線を遠ざけようと、ディーヴァの爪先に目を落とす。が……視線はすぐに上に滑り出し、ふくらはぎから太腿、丸みを帯びた腰、引き締まったウエスト、そしてふくよかなバストへと移動してしまう。3回チャレンジしたところで、ディーヴァが殺し文句を口にする。
「恥ずかしいわ、坊や。そんなにジロジロ見つめないで♥」
駄目だ、完全にカメラが固定されてしまった……。朋也は観念した。
すっかりディーヴァの術中にはまった朋也は、目を大きく見張り、口元をわななかせるマーヤの胸に狙いを定め、弓を引き絞った。
今にも彼の手から矢が放たれようとしたとき、突如中央の巨大な装置のパネルが強烈なグリーンの光で満たされた。テンプテーションの効果が一瞬にして切れる。
≪ディーヴァよ。その者に手出しはならぬと言ったはずだ≫
「キマイラ様っ!?」
どこからともなく響き渡る上司の声に、ディーヴァは狼狽しながら抗議の声を上げた。
「で、ですが、私には一族すべての者に対する生殺与奪の権限が!」
≪1人を除いては、だ≫
有無を言わせぬ宣告の前に、ディーヴァはがっくりと膝を折った。
ブーンという低いうなりとともに、巨大な装置の前面に並ぶたくさんのランプが複雑なパターンを描いて点滅し始めた。うずくまったディーヴァの身体がいきなり白く輝きだす。あふれ出した光はそのままマーヤ目がけて流れ込んでいく。2人の羽の模様が呼応するかのように明滅する。
「あああああっ!!」
「マーヤッ!?」
彼女の悲鳴を聞いて、朋也は閃光の中を手探りするように腕を伸ばした。手が何かに突き当たる。丸みを帯びた彼女の肌だったが……これは……彼女の、胴? いや、太腿? 違う、腕だ……。いきなりこんなに太った??
光が収束すると、目の前に少女が立っていた。背丈は朋也の顎くらいしかない(いや、くらいもあるというべきか……)。腰まである長い髪はピンク色。広げると2メートル近くありそうな蝶を思わせる虹色の羽、そして頭には1対の触角。
一瞬ディーヴァかと思って焦ったが、もちろん彼女じゃない。困惑した表情で自分を見つめていたのは、さっきまで70センチほどの体長しかなかったマーヤその人だった。
「ど……どうなって???」