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 彼女の場合、下手に回りくどいアプローチをするよりは、ズバリ直球勝負に出たほうがいいだろう、と朋也は考えた。
 きょとんとするクルルの顔を正面からじっと見つめる。今から自分に結婚を申し込まれるとは思いもよらない顔だ。OKしてくれるかな? 嬉しいって言ってくれるだろうか? 泣き出してくれたりなんかしちゃって♪ いや、それより断られたらどうしよう……。
 駄目だ駄目だ、こういうのは思い切りが肝腎だよな。早鐘のように高鳴る胸を押さえ、1つ大きく深呼吸すると、改めて彼女に向き合う。さあ、後3つ……いや、5つ数えたら言うぞ!
「結婚して欲しい……」
「え? して欲しいの? さっきして欲しくないって言ったじゃん!」
 何の感慨もない反応だった……。
「いや、そうじゃなくて──」
「なに? して欲しくないの? 今して欲しいって言ったじゃん!」
「いや、だからそうじゃなくて──」
「もう……して欲しいの!? 欲しくないの!? はっきりしてよねっ!」
 ついに癇癪を起こしてしまう。駄目だ、完全に失敗だ。撤退する他はない。
「やっぱりいいや……」
「いいやって、した方がいいやなのか、しなくていいやなのか、どっちなのさぁ~っ!?」
 ……。真剣なプロポーズのはずが漫才になってしまった。「俺と」を入れなかったのが誤算だったか。仕方ない、次の機会を待とう……。


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