考えた末、月並みながら円満な家庭を築きたいという趣旨を込めたメッセージに落ち着いた。
きょとんとするクルルの顔を正面からじっと見つめる。今から自分に結婚を申し込まれるとは思いもよらない顔だ。OKしてくれるかな? 嬉しいって言ってくれるだろうか? 泣き出してくれたりなんかしちゃって♪ いや、それより断られたらどうしよう……。
駄目だ駄目だ、こういうのは思い切りが肝腎だよな。早鐘のように高鳴る胸を押さえ、1つ大きく深呼吸すると、改めて彼女に向き合う。さあ、後3つ……いや、5つ数えたら言うぞ!
「……君の作った味噌汁が、食べたい……」
「へ? 味噌汁? 何それ? ミソの汁??」
キョトンとしながら質問する。
しまった、つい彼女が自分と同じ価値観──というか食文化に慣れているつもりで言ってしまった。
「えっと、味噌汁というのはだな~、俺の住んでた国で一般的な家庭料理で……季節の野菜や海藻や豆腐とかの具に、ミソと、昆布やシイタケやカツブシとかのダシを入れて、だね……」
「ふ~ん、野菜スープの一種なんだ。美味しそうだね♪ で、ミソってなに?」
「えっと……ミソってのは、つまりぃ……蒸した大豆に塩と麹を混ぜて、その~……醗酵させて、だな……」
しどろもどろになりながら答弁する。自分でミソなんて作ったことないので、正確なところは何もわかってないし……それより、話題がどんどん逸れていくじゃないか……。
「う~ん、千里だったら知ってるかもしんないけどなあ?」
実際は知らない可能性が高いが、朋也は言葉に詰まって逃げ道を求めた。
「そっか。じゃあ、彼女を助けたら教えてもらうことにするよ。クフフ♪ ああ、早くお味噌汁食べてみたいなあ♥」
「……そだね」
完全に自沈してしまった。仕方ない、次の機会を待とう……。