考えた末、月並みながら円満な家庭を築きたいという趣旨を込めたメッセージに落ち着いた。
きょとんとするクルルの顔を正面からじっと見つめる。今から自分に結婚を申し込まれるとは思いもよらない顔だ。OKしてくれるかな? 嬉しいって言ってくれるだろうか? 泣き出してくれたりなんかしちゃって♪ いや、それより断られたらどうしよう……。
駄目だ駄目だ、こういうのは思い切りが肝腎だよな。早鐘のように高鳴る胸を押さえ、1つ大きく深呼吸すると、改めて彼女に向き合う。さあ、後3つ……いや、5つ数えたら言うぞ!
「……君のビスケットが、食べたい……」
「え? ビスケット欲しいの? なんだぁ、早く言ってくれればいいのに。でも、こんな時間だからあんまりたくさんは駄目だからね!」
そう言いながらポシェットを開こうとする。朋也はあわてて訂正した。
「いや、そうじゃなくて、その……俺のために毎日作って欲しいっていう意味で……」
「えっ!? 毎日食べたいの!? いいよ、クルル、いくらでも作っちゃうよ♪ でも、朋也ってホンットにビスケットが好きなんだねっ! クルルでも、さすがに毎日食べてるとたまには他のものも食べたいって思うのに……」
口をあんぐり開けて驚いてみせる。でも、一応まんざらでもなさそうだ。よかった……って全然よくない。趣旨がまったく伝わってないじゃんか。
「ポシェットの中にはビスケットが一つ♪ フンフ~ン~♪」
クルルはご機嫌になって鼻歌を歌い始める。……。あらためて申し込み直せる雰囲気じゃないな。仕方ない、次の機会を待とう……。