考えた末、月並みながら円満な家庭を築きたいという趣旨を込めたメッセージに落ち着いた。
きょとんとするクルルの顔を正面からじっと見つめる。今から自分に結婚を申し込まれるとは思いもよらない顔だ。OKしてくれるかな? 嬉しいって言ってくれるだろうか? 泣き出してくれたりなんかしちゃって♪ いや、それより断られたらどうしよう……。
駄目だ駄目だ、こういうのは思い切りが肝腎だよな。早鐘のように高鳴る胸を押さえ、1つ大きく深呼吸すると、改めて彼女に向き合う。さあ、後3つ……いや、5つ数えたら言うぞ!
「……君のシチューが、食べたい……」
目の前で突風が巻き起こる。次の瞬間、クルルの姿がいなくなっていた。あれ!? どこ行っちゃったんだ??
辺りをキョロキョロと見回す。と──50メートルほど離れた岩場の影から2つの耳がピョコンと飛び出しているのを発見する。彼女はときどき恐々とこちらの様子をうかがいながらブルブル震えていた……。
朋也は今の台詞をもう一度口の中で呟いてみた。〝君のシチュー〟が食べたい──。恐いかも……。〝君の作った野菜シチュー〟と言わなきゃ駄目だった(T_T)
それから、朋也はなんとか誤解を解こうと地面に頭を擦り付けて平謝りに謝り、ようやく彼女も落ち着いて出てきてはくれたが、しばらくというもの彼から5メートル以内に近づこうとはしなかった──