しょうがないなあ。朋也はともかく戦意がないことを示そうと、ホールドアップした。
「ちょうどいい、俺様の新必殺技を試させてもらおうか。お前みたいな悪党を倒すにゃもってこいだ。兄貴の教えを忠実に守り、血のにじむような思いでゼロからスキルを鍛え直し、ついに開発した究極奥義、その名も真・牙狼!! トラの兄貴……俺はやりやすぜ! どうか天国から見ていてくだせえ……」
駄目だ、こっちが丸腰の姿勢を示しても見向きもしないで自分の世界に浸ってやがる……。
「てりゃぁ~~っ!!」
「ぐはああっ!(XoX;;」
や、やられた……。よけたりしたらさらに誤解を受けかねないと考え、その場を動かずにいた朋也は、ゲドの居合抜きをまともに受け、その場にバッタリ倒れた。
前口上からしてたいした技じゃなさそうだと踏んだのが間違いだった。ゲドのやつ、スキルをジュディに譲渡したばっかりのはずなのに、本当にそんなイヌ族秘伝の極意を究めたのか? さすがトラの子分……見くびるんじゃなかった。ガク(_ _)m
「朋也っ!?!?」
そのとき、ちょうどクルルがやってきた。完全に伸びてる朋也の姿を見て、びっくりして駆け寄ってくる。
「えっ!?」
3人はあわてて成敗した侵入者の顔をのぞき込んだ。
「あちゃ~、どっかで見たことある思うたら、朋也の兄ちゃんやないか!?」
「ホントにね。でも、兄ちゃん、匂いがほとんどウサギ族になっちゃったからわかんなかったよ。不思議だね」
「バカヤロ~、何で最初っから言わねえんだよ~!?」
だから言おうとしたのに──と抗議の声を上げる力もない。
「もう、ひどいよ、3人とも! 何でちゃんと確かめてくれないの!? 朋也、大丈夫?」
クルルは朋也の頭を膝の上に乗せ、心配そうに顔をのぞき込んだ。あ……なんかちょっと幸せかも♥
「チチンプイプイ、痛いの痛いのとんでけ~♪」
……。そんなんじゃなくて、ちゃんと回復用のスキルか魔法で手当てして欲しいんですけど……。