散々な目に遭ったあの夜以来、朋也は結局ミオの夜間行動の追跡をあきらめたが、その後も彼女は夜になると度々部屋をこっそり脱け出しているようだった。奇妙なのは、彼女が夜歩きから帰ってくるたびに、どうも手持ちの鉱石が増えていくような気がすることだ。彼はその理由について深く考えないことにした……。
日中はジュディを含めた3人で連携攻撃の特訓に励むことが多かった。攻撃の主軸は、最も高い攻撃力を持つ剣装備のジュディだったが、息のピッタリ合ったミオと朋也の2人のタッグは、日を追うごとに完成度を増していき、わずかなアイコンタクトで瞬時に次の行動に移れる域にまで達していた。実際、ヒット率を考慮すれば2人合わせたダメージポイントはジュディの2倍を上回り、彼女も舌を巻いたほどだ。クレメインでサンエンキマイラと戦ったときは彼女たちについていくのがやっとだった朋也だが、今ではネコスキルもMAXに達し、9連コンボも難なく繰り出せる。これでカイトとも十分渉り合える自信がついた。
ただ朋也の場合、魔法攻撃のほうは一向に上達の兆しが見られなかった。そっちはマーヤがいるのでパーティーとして不安はないとはいえ、ミオがオールマイティに何でもこなせるだけに、情けない気がしないでもない。手っ取り早く魔法の能力を上げる方法は何かないものか……。
この世界には守護神獣の力を借りるいわゆる召喚魔法が存在するらしいが、使えるようになるには何らかのきっかけが要るとか。一族のスキルはすべて身についたんだし、ネコの神様にもなんとか手を貸してもらえないもんかな? ひょっとして信心が足りないんだろうか? イヌ族みたいに社でもあれば、毎日マタタビをお供えに行くんだけどな~。
いよいよレゴラスへの出港前日、港町ポートグレーに出発する日がやってきた。すでに装備やアイテムなど必要な品はシエナの街で買いそろえてある。準備は万端だった。
5人はオーギュスト博士の遺産である3台の乗物の前に集まった。
「さて、どういう割り振りで分乗するの? リーダーが決めてちょうだい」
ミオが朋也に促す。
3人乗りのサファイアの片側の座席に荷物を載せることは決まっていたので、サファイア2、エメラルド2、ルビー1の配分になるが……。朋也はエメラルド号のサドルにポンと手を置いた。あの晩以来、こいつに一番愛着を抱くようになっちゃったからなあ。
「ミオ」
サイドカーを指差しながら名前を呼ぶ。
ミオは目を細めてニンマリすると、ちらっとジュディの顔をうかがった。彼女は肩をすくめて一言言った。
「譲ってやるからありがたく思えよ!」
「後はジュディがルビー、クルルがサファイアでフィルを乗っけてもらうのでいいかい?」
「よしきた!」
「OK!」
5人はそれぞれ決められた座席に着いた。
「よし、それじゃポートグレーに向けて出発っ!!」