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 3台のバイクとサイドカーで延々と続く砂漠地帯を砂塵を巻き上げながら突き進む。乗物を使えばモンスターにもほとんど煩わされずに済むため、西の砂漠を突っ切る最短ルートを選んだが、中央の最深部だけは避けて通った。旅行者に南北の迂回ルートをとらせるきっかけとなった凶悪なモンスターが巣を作っていると聞いたからだ。何でも、屈強のモンスターハンターを含む100人規模のキャラバン隊を全滅させたとか……。キマイラやカイトより手強いとは思えなかったけど、重大なミッションを控えている手前、余計なリスクを負わないことにした。
 2時間も進むと、東に真っすぐ伸びる水平線が視界に入ってきた。前方に横たわるその水平線の一角だけが白い線分となって切り取られている。近づくにつれ、それは次第に街を囲む城壁の姿を取り始める。あれがエデンの中央大陸東端の都市、港町ポートグレーだ。潮の香りを運ぶ浜風を顔に受けながら、朋也たちは速度を落とした。
 城門の前に到着する。ミオが守衛と掛け合っている間に座席から荷物を下ろす。彼女が手を振って合図を寄越してきた。どうやら了解が下りたようだ。
 門を潜ると、城壁と同じやたら白い壁が目に付き、エーゲ海やアドリア海沿いの街並を思わせた。昼をだいぶ回っていたので食事にしたかったが、ミオがシャワーを浴びたいと言い出したため、泊まる場所を探すことにする。まあ確かに、シエナで買ったゴーグルを装着していたとはいえ、砂があちこち入り込んで口の中までジャリジャリするしな……。制服のP.E.も一朝一夕で防砂効果を得ることまではできなかったようだ。
 5人はホテルの看板を求めて街の中をブラブラ回ってみた。人口密度も街の広がりもシエナほどではないので、道に迷う心配もなさそうだ。住民はシエナやビスタと同様多種族混成だったが、ネコ族の姿が比較的多く目についた。そういや、ポートグレーの名物は海の幸だってシエナの観光ガイドに載ってたっけ……。あと、妖精が多いのは、レゴラスとの物資のやりとりを担当している関係だろう。
 ほどなく、シエナで見たのと同じ船の看板が見つかった。渡航案内所だ。先に出航の予定を確認しようと戸をくぐる。
「レゴラス行きの便は明日でいいのよね?」
 ミオがチケットをチラチラと示しながら、カウンターにいたシカ族のガイドに尋ねた。
「ああ、日蝕観望ツアーですね? ええ、明日出航の予定であってますよ」
「時間は?」
「港を出るのが夜の19:00、レゴラス着が翌朝5:00、ちなみに蝕の開始時刻は正午になります」
 船が出るまでまだ丸1日以上あるのか……。まあ、アクシデントが起こった場合を想定して1日余裕を見たのだから、当然ではあったが。それと、レゴラス神殿のある孤島までは丸1晩かかり、寝ている間に到着することになってるのもわかった。レゴラスに着いてからは迅速に行動しないと、千里を助け出すのに残された時間はあまりないな……。
 ついでに宿泊所の場所を訊いてから、案内所を出る。その先の角のところを海沿いに曲がると港があった。レゴラス-ポートグレー間の連絡船は定員200人、排水量千トンクラスということだが、まだ船着場には姿は見えない。
 ホテルは港の反対側を行ったところにあった。1階がちょうどレストランになっている。市街を歩き回れば他にもっと美味しい店もあるんだろうが、時間も時間だしここで昼食をとることに決め、とりあえずフロントにチェックインする。日蝕の見学客で客室はほぼ埋まっており、開いていたのは1部屋だけだった。滑り込みでセーフってとこか。
 荷物を部屋に運んでから、シャワールームを女性陣が占拠している間、朋也は屋上の展望台に上がって時間を潰すことにした。ミオのやつが「一緒に入る?♥」なんて誘ってきたけど、下手な応答をしようものなら彼女たちに一生物笑いのタネにされかねないからな……。
 海側をながめると、沖に向かって突き出るように砂洲が伸びている。港があるのはその北側の付け根辺りだ。砂洲の南側には白い砂浜が真っすぐ広がり、内陸の砂漠につながっていた。そういや、中1の臨海学校で行った海もこんな感じだったよなあ……。


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