クルルが呼びに来たので部屋に戻り、一浴びしてさっぱりしてから、みんな一緒に1階に下り、遅めの昼食をとろうとレストランに入る。
テーブルにつくと、ネコ族のウェイトレスがメニューを持ってやってきた。ミオに負けずスレンダーなシャムネコの女の子だ。ミオににらまれつつ名前を尋ねてみる。
「あたしのことは〝お魚ちゃん〟って呼んでね♥」
さっそくメニューを開くと、豪勢なシーフード料理が並び、唾液腺を刺激する。といっても、実際は全部海草とプランクトンがベースなんだけど。
気を利かしたつもりで千里に先に回してやると、彼女はろくに見もしないでメニューの下の方にあったツナとワカメのサラダにライスを注文した……。シエナにいたときもそうだったが、どうやらジュディと再会するまでは粗食敢行を決め込んだらしい。ずっと「あの子、ご飯ちゃんと食べさせてもらってるかな?」が口癖だったからなあ……。
でも、そうなるとこっちもあんまりご馳走は頼みにくくなる。結局、ミオを除く3人は千里に合わせ、それぞれ毛色の違う海藻サラダを選ぶことに。
「バカねぇ、あんたたちも。あたいだったらバカイヌの分まで遠慮ニャく食べてやるのに」
ミオは同族のウェイトレスにお薦めメニューを訊き、シーフードパスタにブイヤベースに刺身の特盛まで注文した。
「おい、お前少食のくせにそんなに食って腹壊したらどうすんだよ?」
「平気平気♪ あたいが食べすぎでお腹壊したことあった?」
すまし顔で答える。知らないからな、もう。ほどなく頼んだ料理が届けられる。
「ニャハハ♪ きたきた♥」
ミオの分だけでテーブルの半分を占領してるぞ……。
「ま、同じフェイクでもシエナのよりは出来がいいニャ~♪」
1人でこれ見よがしに舌鼓を打つ彼女を横目に、フォークでカニカマサラダを突っつきながら侘しい思いに駆られる。さすがにサラダとライスだけじゃな~……。俺ももう1皿くらいなんか注文すりゃよかった。
千里は彼女を一度ジロリとにらんだだけで黙々とサラダを口に運んでる……。
「ふぃ~、食った食った♪ あたい、もうお腹いっぱいニャ~」
ミオは満足げに椅子の背にもたれかかった。
「お前なぁ……」
半分どころかまだ3分の1も減ってないじゃんかよ?
「あたいもう要らニャイから、後朋也片付けてちょーだい♪」
って……お前、もしかして──
「……しょうがないやつだな。もったいないからみんなで残りを片付けよう」
クルルとフィルに促すと、お椀により分けて千里の前にも置く。
「ほれ、千里も分担してくれ」
「い、いいわよ、私は。朋也が食べればいいでしょ?」
「俺1人じゃ食いきれないって。それに、明日に備えてちゃんと栄養つけとかなきゃ。なに、ジュディには連れ戻してから盛大にご馳走してやればいいさ」
「う~……」
渋々箸をつけ始める。千里の場合、下手にお節介を焼こうとしてもきかないもんな。ミオのやつ、よくわかってるじゃないか。ありがとな──