「ううん……覚えてないや。ごめん」 朋也は正直に謝った。 人魚の女の子は悪戯っぽくペロッと舌を出した。 「フフ、覚えてなくて当たり前だよね。ごめんなさい、こっちこそ。でも……これならわかるでしょ?」 そう言うと、海中にドボンと姿を消す。と、暗い海中が青い閃光に満ち溢れた。な、何だ、一体!? 続いて波間から顔を出したのは、長いクチバシを備えた愛嬌のある海棲哺乳族、イルカだった。 「き、君は──!」
*選択肢 去年の秋 5年前の夏