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「なんてこった……」
「ちっくしょう、どうやって先に進めばいいんだよ!?」
 ジュディが歯軋りしながらつぶやく。後1歩で千里の所へ到達できるってのに、ここで通行止めとは……。
 そのとき、マーヤが追い着いてきて、4人のいるブロックにフワリと舞い降りた。
「お待たせぇ~♪」
「お、早かったな。どうやって片付けてきたんだ?」
 内心ホッとしつつも、表には出さずに軽い調子で尋ねる。
「テンプテーションを使ったのよぉ。お家に帰ってお寝んねしてなさぁ~いってぇ♪ まぁ、あの子たちはSクラスだから2、3日もすれば目が覚めるでしょぉけどねぇ」
 なるほど……相手を傷つけないで戦力をゼロにしてしまえる最善の手ではある。あの子たちも起きたら彼女に感謝するだろうな。
「今度の一件が無事に片付いたら、朋也にもかけてあげるわねぇ~、ウフフ~♥」
「い、嫌だってば、俺」
「何よぉ、ディーヴァのは受けられてあたしのは受けられないっていうのぉ~!? あたしのほうがバッチシ効く自信あるのにぃ~」
 まだあのときのこと、根に持ってるみたいだな。不可抗力だったのに……。
「ところで、こんなとこでみんなどうしたのぉ?」
「ほら、通路がここで切れちまってるんだ。俺たちは羽がないからこのままじゃ先に進めない……」
 マーヤは腕組みしながら向こう岸のブロックに目をやっていたが、直に仲間たちのほうを振り返って言った。
「たぶん、大丈夫かもぉ♪ あそこのブロックの端にあるのがきっと橋を下ろす装置だわぁ。あたしがやってみるよぉ」
 確かに、折りたたまれた橋の接合部らしき4角形が側面に見える。
「わかった。モンスターに気をつけろよ?」
 彼女は50メートルほど離れた向島に飛んでいった。たどり着くと、彼女は早速操作に取りかかったが、少々てこずってるようで、すぐには動きがない。どうやら、照合装置がついていてオペレータの権限をチェックされているようだ。フューリーのゲートのそれと同じなんだろうが、いきなり飛び級したせいでパターンの認識に時間がかかってるのかもしれない……。いまの彼女はシステムの最高責任者だってのに。
 朋也は何気なく、奮闘しているマーヤ(ここからだとほとんど羽しか見えない……)から、ブロックの下のほうに目を移して驚天した。尻尾の先まで30メートルは下らない巨大なモンスター(見てくれは深海魚のフクロウナギか何かに近い……)が、彼女のいるブロックの真下から接近していたからだ。
「きゃああっ! 何あれ、口と胃袋ばっかりで出来てるよ~!?」
 クルルが震え上がって叫ぶ。朋也は声を張り上げて何も知らずに認証システムに取り組んでいるマーヤに怒鳴った。
「おい、マーヤ! そいつはいいから、急いで切り上げて戻って来いっ!!」
「マーヤ、下! 下! 下を見て! 下だってば~っ!!」
 クルルがピョンピョン跳びはねながら叫ぶ。上に乗ってちゃわからんだろ……。ミオがブロックの縁から身を乗り出し、自分たちのほうを狙ってくるやつがいないか確かめようとする……。
「え~、なぁにぃ? もうぉ、集中できないじゃないよぉ~!」
 身振り手振りを交えた必死の警告も虚しく、マーヤは取り合ってくれない。巨大フクロウナギは、差し渡しが20メートルはありそうな口をあんぐりと開けた。まさか、ブロック毎飲み込むつもりなのか!?
 朋也は何とか牽制しようと弓を射掛けたが、びくともしない。くそっ、距離が遠すぎるのか。魔法も射程外だし。みんなが固唾を飲んで見守る前で、そいつはマーヤを乗せたブロックをそっくりそのまま飲み込んでしまった……。
「いやあっ!!」
「マーヤッ!!」
「あちゃ~、妖精の踊り食いだニャ~……」
 ミオ、お前な……。
 4人が呆然と立ち尽くしていると、突然そいつの表面を突き破って幾本もの矢が飛び出してきた。フクロウナギは身悶えしたかと思うと、白い霧になって蒸発し始める。内側からの攻撃には弱かったようだ……。ホッ。
 ようやく彼女は通路を接続する操作を終え、2つのブロックの間に橋がかかった。マーヤのもとに駆け寄ると、げんなりしたように〝踊り食われ〟体験の感想を述べる。
「ふぇ~、べっくらこいたぁ~~」
 モンスター、レゴラスの妖精部隊、朋也たち一行の三つ巴の戦いが繰り広げられる異空間の中を、一行がさらに先へ進もうとしたときだった。頭上のブロックに突然亀裂が走ったかと思うと、中から巨大な腕がぬっと突き出された──


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