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 5人がさらに神殿内の異空間を上り詰め、最上階まで後4分の1ほどを残すところまで進んだとき、不意に耳慣れた声が響いた。
「ご主人サマッ!!」
 次のブロックの上で枷をはめられてもがいていたのはジュディだった。
「ジュディーッ!!」
 千里が脇目も振らずに飛び出していく。
「ここへ来ちゃ駄目だ!! ボクなら平気だから──」
 ……何かがおかしいぞ? 心の中で警報が鳴る。ミオが彼女を呼び止めようと叫んだ。
「千里、待ちニャ!!」
 朋也は無我夢中で走っていく千里の後を追いかけようとした。まったくあいつは、ジュディのことになると他のものが目に入らなくなるんだから……。だが、100メートル走のタイムも彼女とどっこいどっこいの朋也にはなかなか追い着けない。
「おい、待てったら!! 千里──!?」
 千里が今にもジュディに抱きつこうとした刹那、彼女の姿が不意に歪み、ふっつりと消えた。まさか……映像!? あっと声を上げる間もなく、さっきまでジュディの姿を映していた空間に走った亀裂からぬっと突き出された巨大な腕に、彼女の身体が鷲づかみにされる。
「きゃああっ!!」
 やっぱり罠だったのか! よく思い返してみれば、さっきのジュディはエルロンの森でカイトが流したのと同じだった……。
「千里ーッ!!」
 朋也の見ている前で、次元の裂け目から本体が全身を現わす。身の丈6メートルはあるでかいやつだ。顔が3つある。上から順にコウモリ、モグラ、トドのようだ。どういう組合せなんだか……。ゲッ○ー変型でもするんだろうか?
「我輩ハ神獣きまいら様ノ三獣使ガ1人、おめがきまいらデアル。コレデ〝鍵ノ女〟ノ入手ハ完了シタノデアル。後ハきまいら様ガ紅玉ヲ再生サセルノヲ待ツバカリナノデアル。クカカカカ」
 千里を捕まえた巨大なシャベルみたいなモグラの手が、その上に生えているコウモリの足に千里をバトンよろしく渡した。頭部にあたるコウモリは獲物を確認するや、分離して翼を広げた。
「いやあっ! 離して! 朋也ーーッ!!!」
 千里は暴れ回って逃れようとしたが、二進も三進もいかない。オメガキマイラ(の一部?)は千里をつかんだまま、クルクルと回るように最上階に向かって羽ばたいていった。
「しまったっ!!」
 フィルがアイヴィを唱えるがリーチが足りない。もう目と鼻の先までやってきたというのに、こんなところでドジを踏むなんて……。だが、悔しがっている暇はなかった。
「残リノ者ニ用ハナイ。命ガ惜シクバ早々ニ立チ去ルガヨイゾ。ダガ、生キテココカラ出ラレルト思ウナ。クカカカカ」
 文脈がなんか合ってないぞ、お前……。三獣使の1人というだけあって、変な性格のやつだ。
 要するに、自分たちをここで始末するつもりらしい。交渉の余地はなく、パーティーは戦闘に突入した。


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