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 ミオはジュディの周囲を絶え間なく移動して巧みに彼女の剣を交わしながら、コンボ攻撃を仕掛けてくる。ヒット率も回避率も高い彼女は、1対1の対戦相手としてはかなり厄介だ。しかも、一撃の威力はさほど高くなくても、連撃でダメージポイントを稼いでくる。
 だが、耐久力や防御力などのステータスはジュディのほうが上だった。そして、パーティーを組んで互いにサポートし合う団体戦ではなく、単独戦の場合には基礎体力の差がものを言う。1人であれば必ず攻撃に切れ目ができるからだ。そのうえ、今闘っている階段の上は逃げ回るのに十分な広さはないし、剣と爪のリーチの差も大きい。ジュディは彼女の攻撃をガードして凌ぎながら、チャンスをうかがった。
 攻撃の間がわずかに開いた一瞬をつき、彼女はミオにラッシュをかけた。
 ちくしょう……朋也のやつがお前のことをあんなに心配して、エデンまで捜しにきてやったってのに……ずっとお前のことばっかり見て、お前のことばっかり考えてるってのに……。ボクがあいつの周りをウロチョロしてただって!? あいつに一番近い距離を独り占めしてるのは誰だと思ってんだ!
 ジュディはそこでハッと自分が思いもよらぬ気持ちを心の奥底で抱いていたことに気づいて愕然とした。自分にとって、千里が一番大切な存在であることには変わりはない。でも……朋也とミオの、とりわけエデンに来てからの関係を、正直うらやましく思っていた。もしかして本当は、自分も朋也のことが──
 気がつくと、ミオが膝を折って肩で荒い息をしながら、悔しそうに自分をにらんでいた。しまった、手加減するつもりだったのに、ついムキになりすぎちゃった……。
 ジュディは剣を下ろすと彼女に向かって怒鳴った。
「ミオ、いい加減に正気に返れよっ! そんな石っころ、捨てちまえっ!!」
 ミオの目つきがにわかに鋭くなった。ぞっとするほど憎悪のこもった目だ。おもむろに懐にしまったエメラルドのアニムスを取り出すと、ジュディに向かって突きつける。
「あんたニャンかこうしてやる! 消えニャさい!!」
 グリーンの閃光がアニムスからほとばしり、ジュディの身体を包み込んだ。
「うわあああっ!!」
 緑の光の網に捕らえられたジュディは、そのまま空間に飲み込まれるように消えていった。カランと音を立てて剣が階段の床に転がる。
 妖しい緑の光を浴びながら、ミオは彼女の消えた空間をしばらく見つめた。
「……おやすみ、バカイヌ」
 踵を返すと、彼女はもう1つのアニムスのもとをめざして階段を昇っていった。


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