ミオはジュディの周囲を絶え間なく移動して巧みに彼女の剣を交わしながら、コンボ攻撃を仕掛けてくる。ヒット率も回避率も高い彼女は、1対1の対戦相手としてはかなり厄介だ。しかも、一撃の威力はさほど高くなくても、連撃でダメージポイントを稼いでくる。
それでも、ジュディにはわかっていた。耐久力や防御力などのステータスは自分のほうが上だし、リーチの長い剣のほうが圧倒的に爪より有利なことを。そして、一撃必殺のイヌ族の奥義・牙狼をもってすれば、100パーセント確実に自分が勝てるということを……。
しかし、彼女にはそれができなかった。
爪による連打を集中的に浴び、ジュディはがっくりと膝を折った。
「駄目だ……やっぱり本気出せない……」
「あら、もうおしまいニャの? もっと楽しませてくれると思ったのに。まあいいわ……」
ミオは無念そうに自分を見上げるかつての親友を目を細めて見た。おもむろに懐にしまったエメラルドのアニムスを取り出す。
「あんたのご主人サマにもすぐに逢わせてやるから安心ニャさい。bye-bye!」
グリーンの閃光がアニムスからほとばしり、ジュディの身体を包み込んだ。
「うわあああっ!!」
緑の光の網に捕らえられたジュディは、そのまま空間に飲み込まれるように消えていった。カランと音を立てて剣が階段の床に転がる。
妖しい緑の光を浴びながら、ミオは彼女の消えた空間をしばらく見つめた。
「……おやすみ、バカイヌ」
踵を返すと、彼女はもう1つのアニムスのもとをめざして階段を昇っていった。