アニムスをめぐる騒動が一件落着し、俺と千里は元の世界へ還ることにした。ミオとジュディはエデンに残ることになった。お互い一番の家族と離れ離れになってしまうけど、自分で決めた道だし、それぞれ新しい未来に向かって歩んでいくんだから、悲しむことなんて何もないよな……。
帰還の日、2人に見送られて朋也たちはゲートの上に立った。
「それじゃ、2人とも元気でニャ!」
「そっちもな!」
ミオ……彼女の顔を見つめているうちに目頭が熱くなってくる。本当に世話になったな。お前ならきっとこの世界でもうまくやってけるだろうけど……。そういや、彼女が家出してエデンに来た理由って、結局何だったんだろ? 今さら聞くことじゃないけど、できれば確かめておきたかったな……。
「bye-bye、ワンちゃん♥」
「うん……さよなら、ご主人サマ」
隣の組では、朋也の事前の予想とまったく異なる展開が見られた。2人してクレメインの森が涙の海に沈むほど泣きまくるだろうと思ってたのに、まるでちょっと街まで買物に出かけてくるといった雰囲気だ。まあ、夕べ2人水入らずで過ごしたときにたっぷり別れの挨拶はすませたんだろうけど……。
ゲートの周囲三方に配置された転送装置がブーンと低いうなりをあげて始動した。朋也と千里は階段を登って転送台に上がると、最後にもう1度手を振った。
2人の姿が3色の光に包まれ、やがて消える。ミオはしばらく気の抜けたように呆然と誰もいなくなったゲートの上を見ていたが、そろそろ街に引き返そうとジュディに声をかけた。
「……それにしても、やけにあっさりしてたじゃニャイ? あんたのことだから、千里と別れるとニャッたら涙ボロボロで手に負えニャイだろうと思ってたのに……」
ジュディはぼおっとしたまま答えた。
「……うん……なんか、変なんだ……。ご主人サマ、あれから人が全然変わっちゃって……まるで別人みたいだった。匂いまで……」
不安が胸の内をよぎる。ミオはもう1度空っぽのゲートの上を振り返った。まさか──!?