朋也は頭をハンマーでがんと殴られたような気がした。何だって!? 千里が……死んだ……!?
「嘘!?」
ミオが息を飲んで口元に手を持っていく。
「バカな!! キマイラは千里の身には危害を加えないと言ったはずじゃ……」
言葉で強く否定すれば事実を覆せでもするかのように、誰にともなく叫ぶ。
フィルが無念そうにうつむいて説明した。
「おそらく、一種の事故だと思います……。キマイラの想定しなかった何らかの理由で、アニムスによる魔力の吸収量が千里さんのキャパシティを上回ってしまったのでしょう。それで、彼女の生命力まで……」
そんな……。
ジュディは、まるで生きているかのような千里の亡骸をまっすぐ見つめながら、魂の抜けたような声でつぶやいた。
「ボクの大好きな……何よりも大切な……世界中でたった1人のご主人サマ……。ご主人サマがいないんじゃ、ボク、もう生きてても仕方ないや……。ご主人サマのいない世界なんて、もうどうなったっていい……」
そのとき、ぼんやりと周囲を照らすだけだった2つのアニムスの光が明滅を始めた。不規則な収縮を繰り返しながら、次第に輝きを増していく。
「たぁいへん! アニムスが暴走を始めちゃったわぁ~!!」
マーヤが泡を食ったように叫ぶ。
「見て! アニムスの力が、どんどんジュディに流れ込んでるよっ!」
クルルの指差したとおり、ルビーとエメラルドから紅と碧の光が奔流のように彼女の身体に流れ込んでいく。光はジュディの周りにまとわりつき、やがてアニムスの明滅に呼応するように彼女自身の身体が発光し始めた。な、何が起こってるんだ一体!?
低いつぶやきが聞こえてくる。
「……誰が……誰がご主人サマを殺したんだ? ご主人サマをこんな目に遭わせたんだ!?」
ジュディは生気のない目で左右をゆっくりと見回し、こちらを振り返った。ミオの姿を認め、不意に目つきが鋭くなる。
「……ミオ……お前がエデンに来たおかげで、ご主人サマが巻き込まれて──」
彼女の突き刺すような視線を浴びて、ミオがビクッと飛び上がった。
「ちょ、ちょっとジュディ! た、たんま……」
そうしてコソコソと朋也の背後に隠れ、半泣き状態で彼に訴える。
「ねえ、朋也ぁ、ニャンとか言ってよぉ~(T_T)」