「ジュディッ!?」
千里が悲鳴に近い声をあげて彼女のそばに駆け寄り、膝に抱きかかえる。顔面が蒼白だった。フィルとマーヤがあわててヒーリングを施そうとするが、どうしたことか一向に効果がない。
マーヤが悲痛な表情を浮かべて首を振った。
「もしかしたら……アニムスにぃ……」
どうやら千里の身体に逆流したのは、アニムスの魔力だけではなかったようだ。いや、むしろ──
パーティーのみなが見守る中、千里の腕に抱かれながら、ジュディは彼女の顔を見上げ、か細い声でつぶやいた。
「エヘ……ヘ……ボク……ご主人サマを……護れたんだね……」
最愛の人がそばにいることを確認してホッとしたように瞼を閉じる。ぐったりしたままの彼女の顔を千里は食い入るように見つめた。すると、もう一度ジュディはかすかに唇を動かした。
「……ご主人……サ……マ……よかっ……た…………」
ジュディは安らぎの笑みを顔に浮かべながら、がっくりと首を折った。
「ジュディッ!? やだなあ、もうジュディったら……」
千里が泣き笑いの顔になりながら必死に彼女の身体を揺さぶる。
「やめてよ……眠ったふりなんか……お願い……目を開けて……」
視界がぼやけて愛しい人の顔が見えなくなるほど涙をあふれさせる。顔から微笑みが消え、絶望に歪んだ。
「ジュディ……どうして……やっと会えたのに……もう絶対離れないよって、ずっと一緒だよって、言おうと思ってたのに……」
彼女の亡骸を掻き抱き、頬を寄せながら、千里は慟哭した。
「わああああっ!!」
ジュディの身体が、ほのかな黄色い光に包まれ始めた。金色の輝きが収まってみると、千里の膝の上の彼女は前駆形態に戻っていた。ぐったりと横たわり、かすかに口を開いた彼女の顔は、一目でわかる安らかな死に顔だった。千里の嗚咽が一段と激しくなる。
朋也はただ、愛する人の死を前にして、自分の無力さを噛みしめることしかできなかった。最期のとき、彼女の心を占めていたのは千里のことだけだった。ただ彼女のことだけを思い、彼女のために全てを投げ捨て、彼女の腕に抱かれて、彼女の目だけを見て、息を引き取った。
2人の間に自分の入り込む余地など微塵もなかった。ジュディは自分のことを好きだと言ってくれたけれど、彼女にとっての一番は最初から最後までやっぱり〝ご主人サマ〟だったのだ──