朋也は悩みに悩んだ末、覚悟を決めた。双方を代表する千里とリルケをじっと見る。千里は自分のことを信じきった目で真っすぐこっちを見ている。ジュディとミオも。リルケは意識して朋也から視線を逸らしていた。
リルケ……すまない……。
彼はゆっくり千里たちのほうへ歩き出した。千里もミオもホッと安堵の息を吐くのがわかる。
「リルケ……俺は、君と戦いたくなんかない……。でも、俺自身が向こうの世界を消すのに手を貸すことはやっぱりできない。千里と同じように、俺も約束するよ。エデンに残って運命を共にすると」
最初からこうなると予期していたのだろう。リルケはただ、悟りきったように目を伏せてうなずいた。
「わかっている。私もお前と戦いたくなどなかったが……これも宿命だ」
サーベルを構えてキッと4人をにらみつける。
「私の命に代えても、エデンは護り抜いてみせる!!」
3人のエデン在住の仲間たちがハラハラしながら見守る中、2つの世界の存亡を賭けた戦いの幕がいま切って落とされようとしていた。
そのとき……突然2つのアニムスが目もくらむばかりに燦然と光り輝いた。しかも驚いたことに、2つのアニムスの間に突然蒼い宝玉が出現したのだ。あれはひょっとして、サファイアのアニムス!? 所在不明と言われていたが、透明になって姿を隠していただけで、エメラルドと一緒にこのアニムスの塔で護られていたようだ。
どこからか3重の低い声が聞こえてくる。キマイラ!?
≪リルケよ、よくぞ言った。お主が使命を果せるよう、三神獣の力を授けて進ぜよう≫
≪この世界の未来、あなたに託します≫
≪&h%3a c-)3u6#5#="}];^≫
次の女性の声はフェニックスだろうか? もう1つのは何しゃべってんのかさっぱりわかんなかったけど……。
「う……うああああっ!!」
「リルケッ!!」
アニムスからあふれ出した3色の光が彼女の全身を包み込んだ。その光の中で、彼女の姿が歪んでいく。額、腹部、腕、足の表皮がボコボコと盛り上がり、顔のような模様が浮かび上がる。いや、模様じゃない。本物の、3頭の神獣の顔だった。
それらの顔がアニムスに脅威をもたらそうとする侵入者に向かって口々に宣戦を布告した。
≪エデンに仇なさんとする愚か者どもめ。我ら超神獣の鉄槌を受けよ!≫
≪生命を奪うのは本意ではありませんが、アニムスは死守します。お覚悟なさい!≫
≪&$"#%"(%$()@::@`**[]▲!≫
妖しい光を灯しているのは全身に散らばる神獣の5対の目だけでリルケ本人の目からは生気が失われていた。肉体も人格も、神獣に完全に乗っ取られてしまったのだろう。
くっ……あれじゃバケモノだ……。神獣め……トラやベスやユフラファの村人たちを犠牲にしたように、彼女まで道具として利用するつもりなのか!?
朋也は拳を握りしめながら叫んだ。
「神獣!! これで決着を着けてやる!! 俺たちの世界を勝手に消させはしないぞ!!」
千里も、ジュディも、そしてミオも、これを最後の戦いとすべく、意を決して神獣の集合体である超神獣をにらみすえた。