《あ……あっぱれであった。その方らの愛、しかと見届けたぞ……。では、その方らの望みどおり、2人は解放してつかわそう。しばしここで待て……。ほら、モー神よ、参るぞ……》
ウー神がかろうじて立ち上がり、モー神を背中におぶってヨロヨロしながら塔の中へ入っていった。
なんかもうバレバレな感じだけど、まだ続けるつもりなのか? まあしょうがない、最後までつきあってやるか。それにしても、大丈夫かな、あの2人? 何しろ、千里の最強魔法を至近距離でまともに浴びたからな……。
15分ほど待たされ、千里とゲドがいい加減じれて戻りかけたとき、再び扉が開いて2人の姿が(再び)現れた。
「ご主人サマ!!」
「朋也!!」
「ジュディ!! ミオちゃん!! よかった、2人とも無事で……」
「おお、マイハニー!! よくぞ耐えた! あいつらにひでえことされなかったか?」
このまま何事もなければ、一同再会を果たしてめでたしめでたし、となったのだが──
千里のもとに駆け寄ろうとしたジュディが思いっきりこけた。1回楽園の泉を浴びたくらいじゃ、あのダメージは消えなかったのだろう。その拍子に、懐から白いマントと仮面が転がり落ちる。さっきまで変装に使っていたやつだ。
「なんだこりゃ!? さっきウー神が着けてたのと同じやつじゃねえか……」
「し、しまった!!」
「あちゃ~っ、何やってんのよ、バカイヌ!!」
ジュディを腕で抱きとめようとしたままの姿勢で千里が固まる。長い数秒が過ぎて、ようやく彼女は口を開いた。
「もしかして……2人して私たちをだましてたの?」
頬を引きつらせ、今にももう1発ジェネシスをぶっ放しそうな形相だ。前駆形態時代には1度も彼女に叱られたことのないジュディは、かわいそうなほど縮こまっている。
「ていうか、おまえ、あの下手な三文芝居に気づかなかったのか?」
場をとりなす意味も含め、朋也は千里に声をかけた。
「ジュディが心配で、疑ったりしてる心の余裕なんてなかったわよ(--;;」
「俺様もしっかりだまされちったぜ(--;;」
千里は深いため息を吐いてから、今度は朋也に非難の眼差しを向けた。
「もう、わかってたならなんで教えてくれなかったのよ!?」
「いや、おまえならすぐ気づくだろうと思って……」
朋也はあわてて弁解した。とんだとばっちりだ。それから、千里は声を落として2人に詰問した。
「2人とも、どうしてこんなまどろこしいことしようと思ったの?」
「ごめんよ、ご主人サマ。ボクたちが離れ離れで会えないのはかわいそうだからって、神獣様たちが特別にはからってくれたんだけど……ミオのやつが、どうせだからサプライズを仕掛けようって言い出してさ。ボクは別に普通に再会できればよかったんだけど」
ジュディが口を尖らせ、横目でミオを見ながら言った。
「感動の再会を演出できるはずだったのに、ドジイヌのせいで台無しニャ!」
自分に矛先が向けられそうになったため、ミオがまた言い返した。ジュディはそこでまた上目遣いに千里を見ながらおそるおそる尋ねた。
「ご主人サマ、怒ってる?」
「……猛烈に怒ってるわ……」
千里は拳を握りしめるジェスチャーをしながら静かに答えた。朋也にも彼女の額に青筋が浮かんで見えたほどだ。2人は身を寄せながら一層縮み上がる。
「なあんてね♪ もちろん、冗談よ。ずっと心配でたまらなかったのは本当だけど、こうして無事に会えたんだから、許してあげる」
「よかった♪」
ジュディは大げさに胸をなで下ろして息を吐いた。
「よかねえぜ。俺様の踏ん張りは一体なんだったんだよ~~」
ゲドががっくりと肩を落とす。だが、ジュディはニコニコしながら言った。
「じゃあ、みんなでダリの家に帰ろ! こどもたちも待ってるし♪ ご主人サマとお話したいこと、たっくさんあるんだ!」
「ええ♪」
「無視かよ~~~(T_T)」