「なるほど……君の本気度はわかったよ……」
以前はパーティーで対抗するのがやっとだっただけに、1対1だと苦しい展開になると朋也は覚悟していたのだが、因縁のバトルは割りとすんなり決着がついた。カイトが途中で負けを認めて爪を下ろしたからだ。
カイトはダイヤモンドもジェネシスも使わなかったし、表情とは裏腹にあまり本気を出しているようには見えなかった。一度は死んだ身だけに、まだ本調子ではないのかもしれない。
だが、彼が手を抜いた本当の理由は以降のやり取りで明らかになった。
「朋也……ひとつ聞き忘れていたんだが、仮にゲートを開くのに成功したとして、ミオはどうするつもりだ? モノスフィアに帰還した自分の手もとに留めておくつもりか? それとも──」
なるほど、カイトがずっとミオのことを気にかけているのは察して然るべきだった。朋也は彼が言い終わらぬうちに答えた。
「彼女にはできれば千里と一緒にエデンに来てほしいと思ってる。ジュディも喜ぶはずだ。おまえの言うとおり、ミオに何もかも捨てさせちまったのは俺の責任だし。あくまで本人の意思次第だけど、おまえが実は生きてるって聞いたら、あいつも喜んで絶対こっちに来るはずだぞ♪」
「まあ、確かにね。邪魔者の君が去って、ミオが還ってくる──よく考えてみりゃ、実に魅力的な提案じゃないか」
カイトはにやけた顔でそう言った。案外乗せられやすいタイプだなあ。邪魔者呼ばわりされるのは癪に障るが。
腕組みしてしばらく考えてから、今度はカイトの方が朋也に驚くべき提案をしてきた。
「いいだろう。僕もキマイラのところまで君と同行する」
「えっ、いいのか!? そりゃ、俺としては大助かりだけど……キマイラにまたにらまれるんじゃないか?」
朋也はびっくりして聞き返した。
「気に病まなくていい。僕は飼い主に尻尾を振り続ける玉じゃないしね。正直、前は結局キマイラと戦う機会がなかったから、一度は対戦してみたいとも思ってたし。ゲートを再度開通できる可能性はゼロに近いが、ゼロでないなら、ミオを取り戻す方に賭けるさ」
そう言ってから、彼は苦笑しながら付け加えた。
「僕にも君の無茶ぶりが感染ったかな? ハハ」
こうして、3年前には死闘を繰り広げた宿敵同士だった朋也とカイトは、一時的ながらゲートの開通という目標を共有する同盟関係を結ぶことになった。