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 神獣キマイラとの対戦も、思いの外あっさり決着した。朋也とカイトの2人組の勝利という形で。
 ただ、その理由はカイトの時とは違った。彼は本気を出さなかったが、キマイラの場合、出なかったのだ。
 物理・魔法・回復とオールマイティに一流の活躍ができるカイトがいるとはいえ、3年前の対戦では4人パーティーによる総力戦でも苦戦したが、今回は2人だけで相手をしたのにむしろ楽勝に近かった。
 復活したはずのキマイラの戦闘力は前回の対戦時より明らかに弱くなっていた。HPも以前の半分程度だった気がする。ジェネシスの威力もカイトのダイヤモンドにも劣るほどだった。
 あのときはカイトに霊力を分譲したうえに、キマイラ自身は中心にマイクロブラックホールを抱えて肉体が腐りかけボロボロだったにもかかわらず、エデンの存亡がかかっていただけに気迫が違っていた。おそらく、たった3年では本来のステータスを取り戻したとは到底言いがたいのだろう。
 戦闘に突入する前に、往時の力を取り戻したかのような言い方をしていたが、それもハッタリだったに違いない──
《ムゥ……まさか叡智の神獣たる余が2度も敗北を喫するとは。やはり実体を取り戻してまもない故、本調子とはいかぬようだな……》
 と思ったけど、やっぱり性格みたいだ。叡智の神獣のくせに、なんでこんなに負け惜しみが強くて意地っ張りなんだろうか?
「御託を並べてないでさっさとゲートを開けなよ。このまま消滅させてほしいの? いくらあんたが不死身でも、あと百年は復活できないだろ。それじゃ、エデンが困るんじゃないか? 僕らは別にいいけどさ」
 カイトが上から目線で世界の統治者に詰め寄る。
 たっぷり30秒は沈黙してから、キマイラは意外な返事を口にした。
《……できぬ。余には無理だ……》
「じゃあ、遠慮なくとどめを刺すよ」
 神獣が誤魔化そうとしていると考え、カイトは爪を振りかぶった。
《待て! 話を聞け……。2つの世界のリンクが切れたいま、余単独ではゲートを開通させるのは不可能だ。紅玉の、フェニックスの助力が要る……》
「ふうん……じゃあ、オルドロイへ行って、フェニックスも脅してもうひとつ判子を押させればいいわけだ。楽勝じゃないか♪」
 楽天家のカイトはもうゲートを開通する権利をもぎ取ったも同然と高を括っている。
「とりあえず話し合いからな。神鳥はたぶん、キマイラよりもっと物分りがいいだろ……」
 朋也に神鳥と比べられたのが気に入らなかったのか、キマイラは不機嫌な声で付け加えた。
《もう勝手にするがよい。言っておくが、神鳥は掟を破る行為には厳しいからな。素直に頼みを聞いてくれると思わぬほうが身のためだぞ》
 そう言い残すと、神獣は超空間の中に姿を消してしまった。なんかすねてしまったみたいだ……。
 カイトはもうキマイラのことになどかまわず、朋也に向かって言った。
「善は急げだ。さっそくオルドロイ神殿に向かおうじゃないか」


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