戻る






 朋也はサファイア号のスロットルを吹かして時速100キロまで速度を上げ、現場に急行した。
 はたして、爬虫3頭の三獣使・レプトキマイラがゲートの真上に居座っていた。梃子でも動かないつもりだ。
 そして、朋也たちが着くまで待ちきれなかったのか、リルケは三獣使相手に対戦を始めていた。
「遅いぞ、おまえたち!」
「勝手に先に飛び出したくせに!」
 ミオが文句を言うが、今はケンカしている場合じゃない。3人はサファイア号を停めて降りると、すぐさま戦闘に参加した。
「げーとニハ何者モ近寄ラセルナトノてれーぜ様ノ仰セダ。ココカラ我ヲ退カセラレルモノナラ退カセテミヨ! フシュゥ」
 朋也とミオにとっては初対面となるレプトキマイラは、5mはあるカメの甲羅からワニ、ヘビ、カメの首の生えた巨大な怪物だった。サイズだけならキマイラにも負けてない。
 ただ、さすがはリルケ、朋也たちが到着するまでにHPをかなり削ったようだ。3頭のうち、ヘビ頭はリルケのサーベルに切り刻まれてぐったりと伸びていた。
 リルケが後方に跳躍し、朋也たちのそばに舞い降りた。
「私にだけ働かせるな。後は任せるぞ。毒蛇の牙は抜いてやったから、のろまなおまえたちでも料理できるだろ」
「フン、一番楽ニャやつ倒しただけじゃニャイ! それで仕事したつもりニャの!?」
 ヘビは3頭の中では動きが敏捷で、毒ステータス攻撃も持っているため、一番厄介なやつをリルケに先に片付けてもらった格好なのは否めない。だが、攻撃力が破壊的なワニと鉄壁の防御力を持つカメも侮れない。
「あれの弱点はきっと冷気属性だわ。トリニティを調整して、あんたの魔法メインで仕留めるわよ」
「オッケェ~♪ 2人は動きを止めてちょうだぁい」
「よしきた」
 この6年で培われてきたエデンどうぶつ病院トリオの絆が試されるときだ。
 ミオのネコ族スキルのエレキャットやネイルショット、朋也の弓スキルのハートヒットなど、状態異常付加も狙える攻撃で残る2頭の動きを牽制しつつ、マーヤがサファイアベースにカストマイズした3属性魔法トリニティを連続でたたき込む。
「フシュゥ……オノレ、小賢シイ奴ラメ。ダガ、我ガ絶対防御ハ如何ナル物理攻撃モ受ケ付ケヌ。ノミナラズ、テレーゼ様ノ手デ改良サレタ我ニハ、魔法防御ガ低イトイウおりじなるノ弱点モナイ。オ主達ニハげーとヲ通ルコトハデキヌ。フシュゥ」
 大ダメージを受けたレプトキマイラは、戦闘不能のヘビも含めた3頭を甲羅の中に引っ込め、防御の態勢に入った。確かに、これじゃ手の出しようがない。
「へぇーんだ、そういうことは、あたしの必殺技に耐えてから言いなさいよねぇー。とろけるキッスゥ!」
 妖精の特殊スキル・とろけるキッスは相手の防御力を大幅に下げる能力低下補助スキルだ。大抵のモンスターはほぼゼロにまで削られるほど強力だ。レプトキマイラの甲羅も安物の瓦程度の固さになった。
「九生衝!!」
「束射!!」
 朋也とミオが最強物理攻撃技の連携攻撃をお見舞いする。
「バカ……ナ……」
 レプトキマイラは自分が踏み潰した民家と同様、原型を留めないほど粉砕された。やがてエメラルドに輝く粒子となって蒸発する。
「ま、ざっとこんニャもんね♪」
 傍観していたリルケに向かってあてつけるようにニヤリとしながらVサインを出してみせる。
「ふむ。まあいいだろう。タイムロスをリカバリーできるほどではないがな」
「ニャによ、その上から目線は!?」
 朋也たちは障害物のいなくなったゲートの転送装置に向かった。マーヤが羽の紋様に基づく認証機構をチェックする。彼女の登録IDはまだ有効なようだ。
「通せんぼさんがいなくなったところで、いざフューリーの国へしゅっぱぁ~っつ!」


次ページへ
ページのトップへ戻る