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27E クルルの新居探し




「さて、おばさんにも村長にも挨拶を済ませたはいいけど──」
 朋也とクルルはキリスウングル温泉への1週間の新婚旅行を終えて、ユフラファに戻ってきたところだった。ちなみに、村長とは以前の村長夫人のことである。
「これからどうしようか? いつまでもおばさんの厄介になってるわけにもいかないし、しばらくはどこか空いてる小さな部屋でも借りるしかないよな……」
「そうだね。でも、いずれはちゃんとした家に住みたいな♪ 家族はやっぱり大勢いる方がいいし。ねえ、朋也は子供は何人がいい? 10人? それとも20人?」
 ……クルル本人は冗談のつもりはないらしい。ユフラファやインレの人口回復にも本気で貢献する意気込みだ。でも、さすがにそんなにわ……(--;;
 2人で話し込んでいたとき、ふと周りを誰かが取り囲んでいるのに気づく。村のウサギ族の女の子たちだ。
「こらあ、クルル! あんたズルイじゃないの! 自分1人だけイイ男つかまえてくるなんてッ!」
「私たちにも寄越しなさいよっ!」
 ……。ユフラファの男性不足解消のため、村ではシエナやビスタなどに男性の定住者募集の広告を出し、すでにチラホラと応募者が集まりつつあった。中にはウサギ族の男性も含まれていた。
 だが、ユフラファとエデンの救世主扱いで、スキルも体臭も一族そのものになってしまった朋也は、若い女の子の間で注目の的だったのだ……。
 タジタジとなる朋也の腕にクルルがしがみついて抵抗を試みる。
「だ、駄目だよっ! 朋也はクルルのものなんだから、あげないもんっ! みんなも人に頼ってばかりいないで、自分で捜す努力をしなきゃ──」
「問答無用!」
「何でも独り占めはよくないよねっ! 困った時はお互い譲り合わなきゃ♪」
「せっかくだから、彼にユフラファの共有財産になってもらうってのはどう?」
「ねえ、お兄さん♪ こんなガキンチョやめて、ナイスバディのあたしに乗り換えな~い?♥♥♥」
 身の危険(……)を感じた朋也は、クルルにこっそり耳打ちした。
「しょうがない。ユフラファに住むのはあきらめて、どこかよその土地にするか?」
「え? でも、どこへ行くの?」
「ううんと……と、とりあえず考えるのは後回しにして、この場は逃げよう!」
 朋也はクルルの手を掴むと、輪の空いているところをついてダッと駆け出した。
「あ!? こら、待てーっ!」
「男は置いてきなさいよぉ!」
「逃がさないから~っ!」
 女の子たちはピョンピョン跳びはねながら追いかけてきた。
 クルルと手をつなぎながら村の外れまで駆けてきた朋也は、もうそろそろこの辺でいいかなと思い、後ろを振り返って仰天した。村の中でも特に足の速い子が2人ほど、今にも追い越さんばかりに朋也たちを猛追してきたのが目に入ったのだ。
「うわっ、まだついてきてる!?」
「男は置いてけーっ! ウサピョンソバット!!」
「きゃっ!」
 1人が空中高く飛び上がり、ウサギ族スキル最高位の後ろ踵落としを繰り出す。標的はもちろんクルルだ。
「危ない、クルルッ!!」
 朋也はとっさに急ブレーキをかけると、二の腕で彼女をかばおうとした。幸いかすめた程度ですんだものの、下手をすれば骨ごといってたかもしれない。
 それにしてもユフラファ村のウサギ族の女の子って、なんでこんなに強いんだろ? 朋也とクルルもなんとかウサピョンソバットを会得するに至ったが、一体どれだけ手強いモンスターたちとの戦いを重ねたことか。これも村がたどった数奇な運命の故なのか……。
「バニーステージ!!」
 クルルが複数対象を混乱状態にする一族のステータス攻撃スキルを発動する。同族相手ではやや確率が下がるが、今は運よく2人ともかかってくれた。
 今のうちにと、2人はあわてて村の城門の外へと脱出した。


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