マーヤと合流でき、もう迷う心配もなくなった。渓流の先はしばらく高台に添って道が続いている。朋也の記憶もだんだんはっきりしてきた。そういえば、〝ミャウ〟と出会ったのもこの辺りだったな……。
開けた場所から木立の間へと延びる道に差しかかったとき、再び生い茂る草葉のバリケードが2人の行く手を遮った。
「あれぇ~っ!? おかしいわねぇ、来た時にはこんなに葉っぱが茂ってなかったのにぃ~」
「これもやっぱり神木の妨害か……。突破するぞ、マーヤ!」
2人してバリケードを崩しにかかる。朋也が手前側を杖で物理的に破壊し、マーヤが魔法で上部を焼却していく寸法だ。
そのとき、いきなり茂みの中から何かがジャンプしてきた。標的にされたのはマーヤだ。
「ひゃあぁぁ~~っ!!」
出現したのはクモ型モンスターだった。似た奴には以前も出くわしていたが、レベルの低いいわゆる雑魚モンだったのに対し、こいつの方が動きが素早く能力も格段に上だった。マーヤはあっとうい間に粘着性のある強力な糸でグルグル巻きにされてしまった。
モンスターまで神木に加担しているのかと思ったが、そうではなかった。よく見ると、クモの背中からいくつもの胞子嚢が飛び出している。寄生性の菌類に操られているに違いない。
「ひぇぇ~っ! クモに食べられちゃうぅ~っ! 毒液注入されて、ドロドロに溶かされて、チューチュー吸われちゃうぅ~っ!!」
すっかり繭の中に閉じ込められたマーヤに、クモが大顎をガチガチ鳴らしながら近づいていく。早く彼女を救出しなくてはと、朋也が邪魔するツルを掃いながら前進しようとしていたとき、もう1匹のクモが頭上から跳びかかってきた。
「うわっ!!」
首筋に落っこちてきたクモを必死に払いのけようとするが、クモのほうも振り落とされまいと服にしがみついて離さない。足元にもツルが伸びてきて朋也の動きを封じようとする。
そのとき、朋也は視界の隅で人影を捉えた。崖の上に現れたその人物は、忍者のような身のこなしで素早く移動しながら囚われの2人の方へ近づいてきた。
「ネコキック!!」
ネコ族の女性の強力な蹴りを腹部にくらい、朋也に取り付いていたクモモンスターは体液を吐き出しながら吹き飛ばされた。
続いて彼女はマーヤに食らいつこうとしていたもう1匹のクモを鋭い爪で刺し貫いた。
「ミオッ!!」
まぎれもなく彼女だった。見間違えるはずもない、朋也の大切な家族だ。
「話は後よ。こいつらを片付けちゃいましょ!」