ミオの乱入により、神木の手下のバリケード植物およびクモモンスターとの戦闘は仕切り直しとなった。
「マタタビボンバー!!」
ネコ族の上位スキルであるマタタビボンバーは、個々の成功率は低いものの神呪以外のステータス異常をすべてセットでかけられる優れものだ。特に石化の特殊スキルを持っていたのはかつてのパーティーでもミオとフィルだけだった。
植物系モンスターは石化に弱い。敵の動きが止まったところで、マーヤが全体攻撃魔法をお見舞いする。
「よくもグルグル巻きにしてくれたわねぇ~っ! これでも食らいなさぁーい! トリニティー!!」
3原色の光に巻かれ、バリケードは跡形もなく取り払われた。
一息吐いてから、改めてミオに向き直る。ミオの方はジャンプする勢いで朋也に跳びついてきた。
「朋也! 会いたかったニャ!」
涙声でそう言うと彼の胸に顔をうずめる。朋也もいとおしさがこみ上げて、彼女をぎゅっと抱きしめた。
しばらく抱擁を交わしてから、やっと落ち着いて話し始める。
「元気だったか?」
「ええ。風の向くまま気の向くままに旅を続けてるわよ♪」
そう言ってにっこり微笑む。彼女の笑顔は言葉どおりに旅を楽しんでいる証拠であり、朋也も安堵した。
それから、ミオは真剣な表情になって尋ねてきた。
「あたいのことより、朋也のほうは大変みたいね。でニャきゃ、あんたがここにいるはずニャイもの。あたいもニャンとなく虫が知らせたから、クレメインにやってきたのよ」
相変わらず勘も洞察力も鋭い。さすがは天才ニャンコだ。ともあれ、マーヤもミオも今日この森に訪れ、朋也と再会することができたのは、文字通り幸運に助けられたといえる。
マーヤに対するのと同じように、朋也はミオにフィルが神木の杖に乗っ取られて昏睡状態に陥ったことから一連の経緯を詳しく説明した。
「ふみゅ……キマイラニャンかに頼るのは癪だけど、他に道はニャさそうね。いいわ、あたいもあんたについてってあげる」
「ありがとう、ミオ! うれしいよ♪」
「お礼はハグとキス1回分ね♥」
ミオはにんまりと目を細めた。
こうして朋也はかけがえのない家族と再会を果たし、ともに旅を続けることになった。フィルが倒れてからはともすれば悲壮な思いに捉われがちだった朋也だが、2人の仲間に勇気を分けてもらい、彼女をきっと助け出してみせると決意を新たにした。