朋也たちはそれから神木の妨害を受けることもなく、ビスタとシエナ、ポートグレイの街を経由して無事にレゴラスへとたどり着いた。彼らは賓客として神獣キマイラの玉座に通された。
《ふむ、なるほど……神木がそのような陰謀を企てていようとはな。通報大儀であった。余がエメラルドの守護者として善処しよう。やつは動物を甘く見すぎだ。余が遺伝子操作で、樹の精には危害を加えず、神木の組織のみを攻撃する線虫を用意しよう。しばし待つがよい》
キマイラが解決策を持っているかどうかは賭けだったが、朋也はそれを聞いてホッと胸をなで下ろした。さすがは叡智の神獣、こういうときは頼りになる。
《ところで、モノスフィアを改革する作業のほうは順調か? 百年後の日食までに目処はつきそうか?》
少し間を置いてキマイラの方から尋ねてくる。聞かれるとは思っていたのだが、朋也はバツが悪そうに頭を掻くことしかできなかった。
《いや、ハハ……フィルと2人で地道にやってるから、ほんのちょっとずつしか……。一応努力はしてるつもりなんだけど……》
《フッ……まあよい。お主は2つの世界を神木の脅威から2度も救った救世主なのだからな。大目に見よう》
朋也は思った。今度みたいに森の木々たちが協力してくれれば、俺たちの仕事ももっとはかどるかもしれないけど……。
《幸い、5年前以降モンスターの活動は沈静化しつつある。レゴラスに来たお主たちの願いをアニムスが聞き届けたのかもしれぬ。あるいは、神木の影響もあったのやもしれぬ……。いずれにしろ、余も体力を回復できたし、生贄を用いずに神鳥と紅玉を復活させる目処もついた。もし、フェニックスの復活が成就したなら、お主とフィルが2つの世界を行き来できる取り計らおう。お主たちにとっては仕事が増えるだけかもしれぬがな。フッフッ》
「ありがとう、キマイラ!」
今日1日でグッドニュースを2つも聞くことができ、朋也はとても幸せな気分だった。
「やったニャ! これで朋也と何度も逢える♥ キマイラにしちゃ大サービスニャ♪」
「よかったわねぇ、朋也ぁ。フィルが元気になったら、またあたしたちに会いに来てねぇ♪」
「元祖ジュディさんにもぜひお会いしたいです! サインもらわなくっちゃ♪」
「私モ緑ノ相談室デオ待チシテオリマスノデ、ふぃるサンニヨロシクオ伝エクダサイ」
仲間たちも口々に祝いの言葉を述べる。
「ああ。その日が来たら、必ずみんなに会いに来るよ!」
いつのことになるかはまだわからない。でも、きっと遠くない未来にその日はやってくるはずだ。朋也はそう信じた。
さあ、後はモノスフィアに帰還してフィルに特効薬を処方するだけだ。待っていてくれよ、フィル!