前ページへ         次ページへ



17 ミオV.S.お魚ちゃん




「きゃああっ、ミオちゃん!!」
 腐肉から成る巨大なシャーペイの怪物は、ミオにおおいかぶさるように襲いかかってきた。佳世に危険が及ぶのを避けるべく、彼女は怪物犬の足元をすり抜け、下の階へと誘導していった。ハラハラしながら見守る佳世の前で、ミオは巧みに敵の攻撃を避け続ける。
 怪物犬の巨体は狭い螺旋階段の幅をほとんど占拠しており、回避するスペースも限られる。しかも、巨犬が動くたびに階段の一部が崩れ、足場はますます狭くなっていく。
 ほどなく彼女は、怪物が出現したときに生じた瓦礫の山と壁の間に追い詰められた。
「あらぁん、どうしちゃったのかしら? 汚らしい雑種のお姉さま♥ スニッター様の呼び出した悪魔のワン公ちゃんを雑魚だニャンて余裕こいてた割に、もうリーチじゃニャイの」
 お魚ちゃんが怪物犬の肩の上で、獲物にじゃれつくときのように尻尾の先をピクピクさせ、目を細めながら見下ろす。
「雑魚ってのはね──」
 大きな前肢の一撃を交わすと、ミオはひらりと宙に舞った。
「あんたのことよ」
 彼女の飛び乗った先は怪物犬のもう一方の肩の上だった。
 お魚ちゃんに向けてサーベルを一閃させる。胴体が真っ二つに割れた。



「ひっ!」
 佳世が両手で顔をおおう。
 が、恐る恐る指のすきまからのぞくと、床に散らばっていたのは、なんとバラバラに砕けたネコの人形だった。さっきまであんなに生き生きと動いていたネコ娘とは似ても似つかない、首の長いシャムネコの姿をした陶器の人形──。
 そういえば、絆の剣は心を持つ者は切れないんだったっけ。
 動きが止まって文字どおりただの肉塊と化したシャーペイのバケモノから、ミオが飛び降りる。
「すごい、ミオちゃん。私が応援するまでもなかったじゃん」
「あの子はスニッターが慰みに作った玩具だったのよ。さあ、片付いたところで、あたいは大樹とクロスケの後を追うわ。あんたは、サルイヌやガキンチョたちと合流して」
「え、でも……私も悠美を助けたいよ」
 不満げに言う佳世に、ミオは落ちた階段を指しながら言った。
「あんたじゃそこ渡れないでしょ? 余裕があったら、上に登るルートを見つけて、他の連中と一緒に来てちょうだい」
 佳世もしぶしぶうなずく。
「うん、わかった。気をつけてね?」
 ミオはおどけたように肩をすくめると、向こう岸まで軽々とジャンプした。もう振り返りもせず階段を駆け上がっていく。
「さあ、私もさっさと拓也くんたちのとこへ行かなくちゃ」
 ミオを見送ってから、佳世は反対側の階段を駆け下りていった。

前ページへ         次ページへ
ページのトップへ戻る