「いやはやまったく、アリ退治はさせられるわ、千里をヘンなやつに誘拐されるわ、ミオは見つからないわで散々な目にあったよ……」
一連の出来事を思い返した朋也はつい嘆き節の口調になってしまった。
「あなた、森の精に対してずいぶん失礼な口きくわねぇ~」
マーヤが呆れたように言う。
「あ……ごめん、怒ったかな?」
「いえ、そんな……朋也さんのおっしゃるとおり、本当に災難続きでしたものね。私が至らなかったばかりに……」
フィルはすまなそうにうつむいた。しまった、考えなしに口にして彼女には悪いことしちゃったな。
「朋也ぁ、あなた気をつけなさいよぉー? 森の精を本気で怒らせたらすっごく恐ろしいことになるんだからねぇ~」
「え、そうなの?」
マーヤに脅かされ、朋也は恐る恐るフィルの顔色をうかがった。
「フフフ……」
「あぁーっ!? フィルが笑うところなんて、あたし初めて見たぁー!」
樹の精と付き合いの長い妖精が驚きの声を上げる。そんなにフィルが笑うことって少ないの? もしかして、朋也たちはすごく貴重な場面に立ち会ったのかもしれない。
「おかしいですか?」
人差し指を唇に当て、小首をかしげるようにして問う。質問の相手は朋也のようだ。
*選択肢 そんなことないよ 無理はしないほうが・・