トラとゲドが去った後、いつのまにか〝ミャウ〟=ミオの姿が見えなくなっていた。もしかして、自分に怒られるのが嫌でまた行方をくらましてしまったのではないかと、不安に駆られた朋也は表に出て彼女を捜し回った。まだ〝ミオ〟とは一言も言葉を交わしてないのに……。
彼女を捜している途中、ユフラファ村で一番大きな建物である公会堂の近くに、1人のウサギ族の女性を見かける。夫がオルドロイに動員されているため、1人で手持ち無沙汰なのか、それとも心配で夜も眠れないのか……。
朋也はひとまず声をかけてみた。
「ネコ族の女の子なら、さっき湖の方へ行くのを見かけたわよ」
礼を言うと、さっそくルネ湖に向かう。湖の周りには散策路が伸びており、ボート乗り場もある。
しばらく歩道を進んだところで、朋也はようやく彼女を発見した。
満月に近い大きな月影が、静かに漣を打つ湖面にゆらゆらと揺れている。草に覆われた湖岸に腰かけ、頬杖をつきながら2つの月をじっと見つめるネコ族の女の子が1人。朋也は後ろからゆっくり近づいていった。
「こんなところにいたのか……。ちょっと捜しちゃったよ」
ミオは彼のほうをちらっと振り返ってから、無言のまま視線を戻した。
なんて声をかけたものだろう? 彼女を捜して歩き回る間中ずっと考え続けていたが、適当な言葉が見つからない。
しばらくして、彼女のほうが口を開いた。
「……やっぱり、怒ってるよね?」