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ミオ: -
ジュディ: -
マーヤ: ++
クルル: -

 4人の提案はいずれも甲乙つけがたかったが、朋也は結局マーヤ案を採用することにした。クルル案では効果に疑問があったし、ジュディの案は能力向上の対価となるリスクが大きすぎる。残るはミオとマーヤの2人の案だが、全員の戦力の安全かつ効率的な向上が見込めるという点で、わずかにマーヤ案のほうに分がある気がしたからだ。
 こうして一行は、3日間をマーヤの勤務するビスタの難民救護センターで過ごすことになった。街外れにあるセンターの裏門をくぐる。朋也の姿を見て動物たちが怯えるといけないとの配慮からだ。ただ、裏口に回る途中で、センター内の様子をうかがい知ることはできた。妖精の介助のもと、モノスフィアからの難民である動物たちが広場で寛いだり運動している。センターはエデンで変身前の前駆状態の動物の姿が拝める数少ない場所でもあった。
 センターの中を忙しなく飛び回っている妖精たちは、どれもマーヤと顔立ちがよく似ていた──というよりそっくりだった。違うのは、髪の色、触角の形状、羽の色とパターン。そういえばマーヤは、妖精の一族には男性がいないって言ってたっけ? ミツバチの働きバチなんかは、オスバチ由来のゲノムが1つ欠けているため双子と姉妹の中間くらいの血統関係だと聞いたことがあるが。
 ただ、いくら顔が似ているといっても、マーヤだけはなぜかすぐに見分けがついた。羽のパターンの違いが一際目立つのもあるが、やはり振る舞いがずば抜けて個性的なのだ。彼女と対話する同族の態度を見ても、一目置かれているのがわかった。さすが〝影の所長〟と呼ばれるだけのことはある。
 途中、マーヤが癇癪を起こしてすったもんだしかけたものの、一行は特殊リハビリ室に通された。そこにはスポーツクラブのトレーニングルームを思わせる用具類が並んでいた。本来は筋力増強というよりストレス解消が主目的なんだろうけど。
 早速一行はマーヤに各種器具の使用法を説明してもらい、トレーニングにかかった。ランニングマシンやエキスパンダーなど効果が目でわかるように工夫されているものもあり、ジュディとクルルはそれなりに楽しんでいる様子だった。ミオは──休憩時間に行方をくらました。
「朋也ぁ♪ これ、ちょっと試してみないぃ?」
 一息入れてドリンクを飲んでいた朋也に、マーヤが声をかけた。一番奥にある用途不明の器具の前に連れて行かれる。
「これ、アポロエクソサイザーっていってねぇ、エデンの技術力と保健医学理論の粋を集めた最新機器なのよぉ~♪ 実は今まで使ったことないんだけどぉ、筋力増強効果はいちばん高いはずなのぉ~♥」
 どっかで聞いた名前だな。いずれにしても、使用経験がないというのが気にかかる……。
「ねぇ~、一度でいいから試してみてくれなぁい? データを取らせてもらえれば、妖精のみんなも喜んで、ヒト族も再評価されるしぃ、一石二鳥なんだけどぉ~」


*選択肢    トライする    死にたくない

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