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ミオ: --
千里: +++
ジュディ: ++

 朋也は腕組みをして考え込んだ。先ほどの感想ではないが、魔法を駆使できるようになった以上、戦力としては千里のほうが自分を上回っているのは、悔しいけど否めない。
彼女の動機が自分より薄弱だなどと言えないのもわかってる。おそらく彼女の場合、ジュディと離れたくないというのも大きな理由だろうが、それが正当でないと言う権利はない。朋也自身、トラとの約束ばかりでなく、ミオと一緒にいたいことも動機に含まれていたし。ミオと違って、ジュディはもしかしたら、千里が帰るといえば力を失ってもモノスフィアまでついていくかもしれないけれど……。
 後はただ、彼女が女の子であり、自分の幼なじみだから心配だ、という理由だけだ。心配なのは変わりなかったが、結局彼女がどうしたいかは彼女自身が決めることだ。
「わかった……。千里が残ってくれるなら俺も心強いよ」
「ありがと♥ 私、頑張るから……」
 口にしてみて、朋也は改めて実感した。世界でたった1人のニンゲンであるより、2人の方がどれほど心強いことか……。彼女も同じことを考えていたんだろう。
「ねえ、朋也。私たち、この世界でたった2人のニンゲンなんだよね……」
 頬をほのかに紅く染めて自分を見つめる千里を前に、朋也は急に胸がドキドキしてきた。
「あの、ね……私、朋也のこと──」
 そのときだった。後ろのほうでかすかに物音がした。
「あら、ジュディ?」
「え?」
 千里が声をかけると同時に、パタパタという足音が遠ざかる。朋也が振り返ったのは、誰かが廊下の向こうに消える寸前だった。最後にチラッと見えたのはフサフサしたグレーの尻尾。
「どうしたんだろ? おかしなやつだな」
 彼女の去ったほうに目をやりながら首をかしげる。
「……あの子、もしかして朋也のこと好きになったんじゃ……」
 同じように誰もいなくなった廊下を見ながら、千里が小声でささやいた。朋也はびっくりして彼女を振り返った。
「ええっ!? まさか! ここまでの道中、ジュディにゃずっとどやされっぱなしだったんだぜ!?」
「さあ、どうかしらね……」
 朋也の顔をしかつめらしくじぃーっと見ながら先を続ける。
「口で怒ってるように聞こえても、本当はそうじゃないのかもよ? なまじ言葉をしゃべれるようになった分、そちらに気を取られがちでしょうけど。あの子、素直じゃないとこあるけど、嘘は吐けないタイプだし……彼女のホントの気持ちが知りたかったら、顔や言葉ばかりじゃなく尻尾もよく観察してみることね」
「そ、そんなもんか?」
 朋也はもう一度ジュディが駆けていったほうに目を向けた。


*選択肢    後を追う    千里に任せる

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