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ミオ: -
千里: ---
ジュディ: ++

 千里に対してはいろんな意味で引け目を感じたが(この場にいないミオに対してもだが)、朋也はジュディの後を追うことに決めた。
「ごめん、千里。俺、ちょっと様子を見てくるよ」
「ジュディの気持ち、ちゃんと考えて、応えてあげてね?」
「ああ……」
 千里は笑顔で朋也を送り出した。彼の後ろ姿が見えなくなってから、ため息を吐いてつぶやく。
「あ~あ……。どうやらさらわれてる間にジュディに先を越されちゃったみたいね……。ま、いっか♪」
 ジュディが彼に好意を寄せるのも無理はないな、と千里は思った。ひょっとしたら、好みのタイプまで〝ご主人サマ〟に似ちゃったのかもしれないけど……。1週間という短い時間だったけど、2人が絆を深めるには十分だったのだろう。ある意味、自分はキューピッドの役を果たしたといえるかもしれない。せめて2人の関係がうまくいきますように、と彼女は祈った。

「……ウッ……グス……」
 彼女は1つ上のフロアのバルコニーで見つかった。欄干にもたれて顔を伏せている。泣いている……のか?
 朋也はゆっくり近づくとそっと声をかけた。
「ジュディ?」
「と、朋也!?」
 ジュディは一瞬ひどくびっくりして朋也を振り返ったが、急いで涙を拭うと、何でもなかったかのように装って罵声を浴びせた。
「な、何だよ!? あっち行けよ!」
 う~ん、いつもと変わらない反応だな……。そこで朋也は、千里に言われたように尻尾を観察することにした。
 ネコとイヌとじゃ尻尾による感情表現のパターンは違うからなあ。どちらも状況によって同じ振り方でも全然意味が違う場合もあるし、尻尾だけじゃやっぱり判断できない気がする……。でも、成熟形態になると、尻尾によるサインは逆に重要な意味を帯びてくるのかもしれない。言葉より尻尾のほうが嘘を吐けないだろうという千里の観測には、朋也としてもうなずけるものがあった。
 さっきまでだらりと垂れ下がっていたジュディの尻尾は、いまは激しい振幅で、不規則に揺れている。ミオだったら不機嫌な可能性が高いと思われたが、彼女の場合はどうだろう? う~む、判定に悩むところだ……。
 ジュディは朋也が後ろに立ったまま押し黙っていたため、不思議に思ってチラチラと背中を振り返っていたが、彼の視線が一点に集中しているのに気づくと、お尻を押さえて正面に向き直り、真っ赤になって怒鳴った。
「なんでさっきからボクのお尻ばっか見てるのさ! 朋也のエッチ!」
「え? ち、違うって! その……千里に、ジュディの気持ちが知りたかったら尻尾を観察しろって言われたから……」
 朋也は慌てて弁解した。
「え~? もう、ひどいなあ、ご主人サマったら」
「それより、一体どうしたんだ? せっかく千里と再会できたってのに、そんな顔してたら彼女だって心配するぞ? 第一、お前に泣き顔なんて似合わないぜ? それとも、何か千里に言えないことでもあるのか? 俺でよかったら相談に乗るぞ?」
 自分に好意を抱いてるんじゃないかという千里の指摘はとりあえず置いて、朋也はまず彼女が何で悩んでいるのか尋ねることにした。いきなり「俺のことが好きなのか?」なんて訊こうものなら、やっぱり殴られそうだし……。
 ジュディはしばらく逡巡していたが、やがて意を決したように口を開いた。
「……あの、さ。朋也は、ご主人サマのこと、どう思ってるの?」


*選択肢    友人    恋人

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