悪いとは思ったが、朋也は彼女が早まった真似をしないよう無我夢中でクルルを抱きしめた。
一瞬ビクッとしたものの、朋也がそのままの姿勢でじっとしていると、彼女は次第におとなしくなった。もう抵抗する気配がなくなったところで、彼はこどもをなだめるように優しく彼女にささやきかけた。
「ごめんな、クルル。お前の願い、叶えてやれなくて……お前のために何もしてやれなくて……慰めの言葉なんて意味ないのもわかってる。でも……捨てちゃいけない……。生きていれば、自分ではどんなにあがいてもどうにもならない時ってあるもんだよね。必死に祈っても届かなくて、絶望に打ちひしがれて、何もかも虚しく思えて、誰も信じられなくなって……それでも、希望だけは……それだけは、絶対捨てちゃ駄目だよ……。クルルの思ってることは何1つ間違ってやしないよ。でも……クルルがそれを捨ててしまったら……希望を捨ててしまったら……何も変わらない!! 争いのない、不幸せのない世界なんて、いつまでたっても来やしない! だから、その気持ちだけは失くしちゃいけないよ、クルル……」
「朋也……」
腕の中で彼女が完全に力を抜いたのがわかる。
「ありがとう……もう、大丈夫だから……」