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「まさかお前たち、グルだったのか!?」
「う、嘘だよね?」
 クルルも困惑して尋ねる。
 あのときリルケの襲撃から救ってくれ、ダイヤモンドまで提供してくれたはずの協力者は、それには答えず、意外な要求を朋也たちに突きつけた。
「ご苦労だったね、朋也。≪彼≫の計算に手違いは起こり得ないとはいえ、ここまで手はずどおりに進めることができたのは偏に君のおかげだ。改めて礼を言うよ。さあ、千里君を渡してもらおうか?」
「!? な、何を言ってるんだ!?」
「ふざけるな、このキザネコ野郎!! 誰がご主人サマを渡したりなんかするもんかっ!」
 朋也とともに、ジュディも千里をかばって前に出る。
「カイト……」
 ミオも身を乗り出した。
「やあ、ミオ。元気そうで何よりだ。今すぐにでも愛を交わしたいのは山々なんだが、まだ片付けなくちゃならない仕事が残ってるんでね。残念ながら今度会うときまでお預けだよ」
 コンニャロ~、キザにも限度ってもんがあるぞ。
「一体何の真似だ!? 最初から俺たちを騙してたのか!?」
「おや? この前僕は、いずれまた会うだろうとも、その時も味方でいるとは限らないとも言ったはずだがね?」
 澄まし声で言うカイト。取り付く島もない。
 続いて朋也はリルケに目を向けた。
「リルケ! 君もなのか? 夕べ俺に打ち明けてくれたことも全部嘘だったのか!?」
「……」
 朋也の問いに、リルケは一瞬何か言いたそうな顔をしたが、結局無言のまま視線を逸らしただけだった。確かに、明日になったらまた敵同士だと告げられていたとはいえ、朋也は未だに信じたくない思いだった。
「まあ、すんなり引き渡してもらえるとは思ってなかったし、こういうスマートでないやり方は僕の流儀に反するから本当はしたくないんだが……力ずくで確保させてもらうとしよう」
 言うや否や、カイトはリルケとともに呪文を詠唱してきた。
「エメラルドLVⅡ!!」
「ターコイズ!!」
 いかずちとつむじ風の魔法が6人を襲う。
「うわああっ!!」
「くっ!」
 不意打ちの所為で初動が遅れてダメージを食らってしまったが、クルルとマーヤが魔法反射・半減スキルを行使する。
「ネイルショット!!」
「ダイヤモンド!!」
 続けて2人組は物理攻撃と高威力魔法の連携技を仕掛けてきた。
「バタンキュウゥ~~(+o+)」
 カイトに狙われたマーヤがあえなくKO。全体回復役を無力化されるのは痛い。すぐにクルルがマーヤの回復に当たる。
「松果突!!」
「ダイヤモンド!!」
 今度はさっきと物理と魔法の攻撃役をチェンジしてきた。効率重視で隙のない攻撃だ。このコンビを同時に相手にするくらいなら、まだ神鳥1羽と戦う方が楽にさえ思える。
 厄介なことに、ダイヤモンドは威力が高いだけでなく、無属性で反射・半減効果がほとんど期待できない。カイトだけでなく、リルケもそのダイヤモンドを使えるとは。
「ひゃうっ!」
 今度はリルケの一撃でマーヤを介抱していたクルルが昏倒してしまう。これでは回復がまったく追い着かない。パーティー全体のHPが確実に削られていく。
 このままでは一方的にやられてしまう。ミオが仲間たちに素早く指示を出した。
「連携で鳥の足を潰すわよ!!」
 集中攻撃で1人ずつ確実にやっつけなければ勝機は見えない。ターゲットはリルケ。どちらも難敵には違いないが、よりスピードが速くそれだけ手数も多くなる彼女を先に倒すのがやはりセオリーだ。鳥族にはミオのネコ属性攻撃の効果が高いのに対し、同族のカイトへは逆にダメージが軽減されてしまう。HPもカイトよりリルケの方が若干低いはず。
 朋也としては、できることなら彼女と矛を交えたくはなかったのだが……。ミオは逆にカイトを相手にする方がやりにくいだろうし、〝鳥の足〟相手なら何の躊躇もないだろうけど。
 今朝までケンカしていた千里もうなずく。後衛で詠唱に入った彼女を朋也、ミオ、ジュディの3人でガードしつつ、タイミングをうかがう。
「ネイルショット!!」
「エレキャット!!」
「飛燕剣!!」
「トリアーデ!!」
 息の合った4人の連携攻撃が決まった──かに見えたが、やはりリルケの回避能力はずば抜けており、朋也以外の攻撃はほとんどかすめただけに終わった。
 朋也の振り下ろした爪とリルケの抜いたサーベルがぶつかり合う。2人の視線が間近に交錯する。
「リルケ! 明日になればわかるって、こういうことだったのか!? こんなやり方、汚いと思わないのか!? 君にニンゲンを非難する資格があるのか!?」
 朋也に責められ、リルケは何か言いたそうにしたが、無言のまま視線を逸らした。
「おい、君。手を抜きすぎなんじゃないか? 彼らに情をかけるなって、≪彼≫にも言われただろ。さっさと終わりにしよう」
 リルケにそう苦言を呈したのは相方のカイトだった。再び準最強魔法が炸裂する。
「ダイヤモンド!!」
 やはりカイトは別格だった。行きで味方としてパーティーに加わったときは頼もしかったが、そのときさえ彼は実力の半分も出していなかったのだろう。
 立て続けに全体魔法を浴びて、6人ともHPをほとんど削られ、息も絶え絶えの状態だ。
 カイトが余裕の表情で勝利を宣言する。
「お遊びはこれまでだよ。神呪!!」
 一瞬、巨大な何者かの影がカイトの背後に浮かび上がった気がした。彼の手が怪しい緑色の光を放ったかと思うと、全員身体が痺れて指1本動かせなくなった。
「さあ、千里君、こちらへ来たまえ」
 緑色の光の触手に囚われた千里は、そのままカイトたちの方へズルズルと引き寄せられていった──


※ ゲーム上では千里とジュディのどちらが好感度が高いかでシナリオ分岐。
千里>ジュディ    ジュディ>千里

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