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ミオ: +
千里: +
マーヤ: ---
クルル: -
フィル: -

 これまでも、謎の怪物に襲われたり、朋也たちのエデンへの来訪が知れ渡っていることが発覚した際に、マーヤはパーティの仲間に自分の知っているはずの秘密を隠し続けてきた。朋也はそれでも、彼女の気持ちを慮って深く追求せず、あるいはかばってやりさえした。だが……もうこれ以上は限界だ。ジュディの命を危険にさらすわけにはいかない。彼女には知っていることを洗いざらいしゃべってもらう必要がある。
「千里の言うとおりだ。カイトが神獣の指示で彼女をさらおうとしたんだとしたら、君には俺たちに説明する義務があるんじゃないのか?」
「あたし……」
 マーヤはただ口を戦慄かせるばかりで、声が出ない。大粒の涙がポタポタと頬を伝う。演技……なわけじゃないな、彼女の場合は。朋也は胸がチクリと痛んだ。なぜかミオはその場を離れて口笛を吹き始める……。
「どうしても言わない気なのね!? もうあなたの顔なんか見たくないっ! 神獣のところでもどこへでも行きなさいよ!!」
 彼女が押し黙ったままいつまでも答えようとしないため、とうとう堪忍袋の緒が切れた千里が宣告を下した。
 マーヤはじっと朋也の顔を見つめると、かすかに微笑んだ。とても寂しげな笑顔だった。
「……千里ぉ、許してねぇ……。短い間だったけどぉ、あたし、みんなと一緒に旅ができてとても楽しかったよぉ……。さよならぁ……」
 フワリと舞い上がると、パーティから離れ、フラフラしながら元来た道を引き返していく。
 マーヤ……結局、俺たちに何も打ち明けてくれないのか? あるいはもしかしたら、本当に何も知らされていないんだろうか? いや、そんなはずは……。遠ざかっていく彼女の後ろ姿を呆然と見送りながら自問する。こんなふうに別れてしまっていいのか? 呼び止めるなら今のうちだぞ?
 そうこうするうちに、彼女の姿は見えなくなった。
「ねえ……なんかマーヤ、ちょっとかわいそうだったんじゃないかなあ?」
 クルルが誰にともなく訴える。半分もらい泣きしている。
「……」
 同じように去っていく彼女の後ろ姿を見送っていた千里が顔を背けた。彼女だって、マーヤを傷つけるのは本意ではなかったろう。そういえばあの2人、初めて出会ったときは、ジュディを媒介にしてあっという間に打ち解け合ってたんだもんなあ……。そう思うと、朋也はますますやりきれなくなった。
「ともかく、今はジュディを救うことを第一に考えよう。ところで、レゴラスってどこにあるんだ?」
 朋也は話題を変えようと努めた。
 さっきからせっせと爪の手入れに勤しんでいたミオが、ややホッとしたように説明を始めた。
「キマイラが住んでいるのは大陸の東の海に浮かぶ絶海の孤島だそうよ。あたいはトラみたいにわざわざ出向いたわけじゃニャイけど。ここから行くとなると結構かかるわねぇ。まずエルロンの森を抜けて、その南のシエナの街に行かニャイと。そこから真っすぐ東を目指せば港町ポートグレーに達するわ。そこで船を捕まえる以外、レゴラスを訪れる手段はニャイみたいよ」
「お前、エデンの地理にずいぶん詳しいんだな?」
 朋也は感心しながらミオに言った。20日ばかりの間に大陸の地理をほとんど覚えてしまったんだろうか。彼女が天才なのは元からわかってたけど。
「これでも朋也が来る前にあちこち廻ったのよ?」
 肩をすくめてニヤリとする。朋也に誉められ、ミオもまんざらではなさそうだった。
 クルルがしばらく考え込んでから口を開いた。
「ねえ、朋也。こういう非常事態だし、クルル、ユフラファに戻るのは後回しにするよ」
「えっ!? でも、村の人たちに悪くないかな?」
 新たに設定された期限は2週間。場所も大陸の反対側の海の上と来ている以上、ユフラファまで引き返さずに一刻も早くレゴラスに向けて出発できれば、それに越したことはないが……。
 戸惑っている朋也に、クルルはポンと胸をたたいて見せた。
「大丈夫! みんなだってクルルに負けないくらいたくましいんだから! それに、今は少しでも朋也たちの役に立ちたいんだ……。だから、ね? 第一、クルルがいないとみんな食べるものに困っちゃうでしょ、クフフ♪ ビスケットのことならクルルに任せといてね♥」


*選択肢    うれしいよ    もう飽き飽き

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