「カイト!?」
どこにいるのかと周囲を見回していると、レプトキマイラの残したエメラルドからまるでプロジェクターのようにレーザー光が投影され、彼の姿が映し出された。
「カイト! ジュディは無事なんだろうな!?」(注)
「私が行くまで、あの子に指1本でも触れたら承知しないわよ!」
≪安心したまえ。ほら、ご覧のとおり≫
カメラの向きが変わり、後ろ手を括られたジュディの姿が映し出される。
「ご主人サマッ! ここへ来ちゃ駄目だ!! ボクなら平気だから──」
「ジュディッ!!」
千里が思わず身を乗り出す。
≪おっと、サービスはここまでだ。期限が来るまで彼女の身の安全は保証するよ。こちらの目的はあくまで君であって、この子は担保にすぎないからね≫
拳を握り締めて歯を食いしばる千里に代わって、朋也が質問を続ける。
「おい、カイト! 三獣使を送り込んだのはお前か!? おかげで森が危うく火事になるとこだったんだぞ!?」
≪ああ……彼を送ったのはもちろん僕じゃない、キマイラさ。君たちは必ず人質を助けにレゴラスへ来るから必要ないと進言したんだが、何しろ彼は超が付くほど疑り深くてね。まあ、彼がニンゲンである君たちをまったく信用しようとしないのも当然だが……≫
「カイト。いつからあたいの身まで平気で危険にさらすようにニャッたわけ?」
ミオが腕組みしてモノスフィア時代の恋人をにらみつける。
≪愛しいひと……愛にもたまには試練が必要だとは思わないかい? もっとも、君は殺したってタダでは死なない人なんだから、僕としては何も心配してないけどね。それじゃ、逢える日を楽しみにしてるよ♥≫
そこまでで映像はふっつり途絶えてしまう。
「ったく、どこまでキザな奴なんだ!」
「やれやれ……あいつのあの性格は死ぬまで治りそうにニャイわね」
ミオは両手を広げて肩をすくめた。
「いくらあいつでも、約束は守るよ、な?」
「さあ、どうかしら? 彼はトラとは正反対のタイプよ。約束ニャンて全然当てにニャらニャイわ」
朋也の言葉をにべもなく否定する。
「ま、幸い、それを破る理由は今のところ見当たらニャイけど。千里を必要としてるのはキマイラニャンでしょうからね」
「いずれにしても、期限までに神殿にたどり着く以外、選択肢はないってことか」
「ジュディ……」
千里が最愛の家族の名をつぶやく。カイトのやることはいちいち気に入らなかったが、一目だけでもジュディの姿を見ることができたのは、彼女にとって慰めになったかもしれない。向こうに着くまでの間に主戦力に倒れられたんじゃかなわないもんな……。
それから一同はまんじりともせずに夜を明かした。日の出とともに行進を開始する。千里は結局あの後一睡もできなかったようだ。レプトキマイラの襲撃後は森の中のモンスターも鳴りを潜め、午前中のうちに一行はエルロンの森の出口に達した。
朋也はクレメインのときと同じように選択肢を選ぶことになった──
(注):パーティーにマーヤがいる場合、ここで千里とジュディが2人とも捕らえられたことが発覚。