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ミオ: +

「本当にインレに行くって言ったのか!?」
 念を押す。
「うん、ちゃんとそう言ったよ」
「本当に、本当の、本当なんだな!?」
 さらにもう一度。
「本当の本当だとも!」
 時刻は午前2時を指していたが、こうなったらとことんまで付き合ってやろうと朋也は覚悟を決めた。まだミオの足取りをつかむのに一度も成功してないのに、白旗を振りたくはない。
 再びエメラルド号のところへ行き、燃料を確認する。ドクター・オーギュストの発明したエンジンは、廃油と鉱石を利用するハイブリッドタイプで(日中は更に太陽光も利用できるという優れものだ)きわめて高効率だったため、鉱石を少し補充するだけでまだまだ十分走れそうだった。
「君もなかなか物好きだねぇ。彼女のことがそんなに気に入ってるのかい?」
「……」
「同族でもないのに彼女の魅力がわかるのかなあ?」
「わかるさっ!」
 おやおやとばかり肩をすくめる。それきりそいつのことは無視して、エメラルド号を発進させる。地図を見た限りでは、インレまではここからポートグレーまでかそれ以上の距離がありそうだ。夜明けまでに着くつもりなら、よっぽど飛ばさなくちゃ駄目だろう。
 大陸西部からシエナまでやってきたルートの逆をたどり、オデッサ平原を抜け、エルロンの森に入る。エメラルド号にはなぜかカーナビに似た位置表示システムまで付いていたので(さすがに博士も衛星まで打ち上げてはいないはずだが)、道に迷う心配はなかった。クレメインからこいつを使えたら今まで何の苦労も要らなかったろうに。
 それから1時間以上、朋也はノンストップで走り続けた。スーラ高原を通過し、やっとモルグル地峡に達したところだ。さすがに道幅も狭くジグザグに曲がった峠をサイドカーで越えるのは難儀する。下手にスピードを出しすぎて曲がりきれないと、谷底に真っ逆さまだし。
 峠の頂にさしかかったところで、朋也はいったん車を停めた。行きにみんなで弁当を広げたのはこの近くだったっけ。背伸びして膝の屈伸運動を始める。ずっと乗りっぱなしだとさすがに腰が痛くなるよ。
 東の空を振り仰ぐと、オリオンが昇ってきたところだった。月明かりのせいで天の川はうっすらとしか見えないが、すばる星団もはっきりわかる。馴染みのある豪華な冬の星座たちに魅了されると同時に、なんだか元の世界に戻ってきたみたいな錯覚を覚える。不思議だよな、ここは間違いなく地球なのに、俺たちの〝地球〟からすれば宇宙の果てより手の届かないところにあるなんて……。
 視線を下ろし、北の地平にそそり立つオルドロイ山をながめる。突然、猛烈な眠気が襲ってきて、視界がぼんやりし始めた。ヤバイ……。
 不意に疑問が頭をかすめる。
「……俺、こんなとこで何やってんだろ? この先に進んでも、ミオに会える保証なんてないのに……」


*選択肢    帰って寝る    あきらめないぞ!

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