いよいよレゴラスへの出港前日、港町ポートグレーに出発する日がやってきた。すでに装備やアイテムなど必要な品はシエナの街で買いそろえてある。準備は万端だった。後は──千里を迎えにいかなくちゃな。
この9日間というもの、彼女のことが気になっておちおち眠ることもできなかった。あいつのことだ、イヴがついていてくれるとはいえ、自分の身体をさんざんこき使ってるに違いない。
2人に射撃の腕を鍛えておけと言われたこともあり、朋也自身もレベルの高い砂漠のモンスターを相手に実戦を交えた特訓に励んではきたが、やっぱり今一つ身が入らなかった。訓練の成果を見せろとか言われると困るなあ……。
1人で迎えにいくつもりだったのだが、ミオたちも一緒にイゾルデの塔に行くと言い出して聞かなかったので、朝食もそこそこに4人そろって出かけ、その足でポートグレーに向かうことになった。とりわけミオは、あの晩2人でこっそりホテルを脱け出したのがよっぽど気に入らなかったらしい。自分もどっかほっつき歩いてたくせに……。3台のバイクとサイドカーに分乗すると、朋也たちは北のイゾルデの塔へ赴いた。
30分ほどで到着し、入口の大きな扉の前に来る。朋也以外の3人は、ひっそりと静まり返った塔の外壁を繁々とながめ回した。
「ふえ~、すっごい高い塔だね!」
クルルは上を見上げた拍子にそのまま尻餅をついてしまう。
「こんな薄気味悪いところによく9日もいられたね、千里……」
その感想に関しては、朋也もまったくクルルと同感だった。まあでも、それを言ったら、イヴなんてこんなとこにたった1人で170年も幽閉されていたんだもんなあ……。自分だったら1時間だっていたくない。女の子はやっぱり強いや。
「今頃オバケの仲間入りしてたりしてニャ♪」
「こら、ミオ! 縁起でもないこと言わないでくれ……」
さてと、それじゃあ早速──