気にはなったが、声の正体を突き止めに行くのはやめにした。明日のこともあるし、トラブルに巻き込まれるのはごめんだと思ったのだ。まさかセイレーンとかじゃないだろうけど……。
声が聞こえてくるのは海のほうだったので、反対側の街中に繰り出す。15分ほどブラブラしてホテルに戻ってくると、もう歌声はしなくなっていた。結局何だったんだろうな?
部屋に引き返すと、彼の使っていた布団が廊下に放り出されていた。ドアの鍵も閉まっている……。ひょっとして外で寝ろってのか!? 一体俺が何したっていうんだよ~??
ノックを繰り返すと、誰かが戸口までやってきた。
「お~い、俺だよ、入れてくれ!」
「駄目! 女の子が寝てるのに戸締りもしないで出かけるような人はお断りよ!」
千里がドアを開けもせずに冷たい声で言い放つ。
う……確かにそれは……。でも、ちょっと散歩しただけですぐ戻ってくるつもりだったし、ここはエデンなんだからそんなに危険はないと思ったんだけどな。それにしても、廊下で寝ろってのはいくらなんでも殺生だ。
「俺が悪かったよ。頼むから──」
千里は朋也の謝罪も懇願も聞き入れず寝室に戻ってしまった……。泣く泣く廊下に布団を敷いて頭から被る。男は辛いニャ~(T_T)